アマゾンの電子書籍で不正に利益--「キャットフィッシング」詐欺の実態 - (page 2)

Zack Whittaker (ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル2016年10月05日 07時00分

 こうしたことから、Shershnyov氏が1人でこの詐欺を企てたと米ZDNetは結論付けた。

 Shershnyov氏は2年間にわたり、強力で複雑なデータベースを運用してきた。それをホストしていたのは、Microsoftの「Azure」インスタンスだ。

 このデータベースは、MacKeeper Security Research Centerによって発見されたもので、詐欺を支える頭脳となっていたが、誰でも中をのぞけるオープンな状態だった。もちろん、どこを見るべきか分かっていればの話だが。MacKeeperのセキュリティ研究者が実際に確認し、それが米ZDNetによる調査の引き金となって、Shershnyov氏の詐欺の破綻につながった。

 見つかったのはこれだ。

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提供:Screenshot: ZDNet

 データベースにある18のテーブルがそれぞれ、詐欺で重要な役割を担っている。

 過去2年間にわたり、このデータベースには1453冊の粗悪な電子書籍に関するデータが保存されてきた。そのほとんどは、数ドル程度の料金で、ほんの数日で書かれており、内容は極めてありふれたものか、そうでなければ、突拍子もないものばかりだ。非言語コミュニケーションの理解に関する電子書籍から、先のばしをやめるためのハウツー本、ハーブで作る自家製抗生物質ローションについてのボックスセットまである。どの本も急ごしらえで、スペルミスや文法上の間違いだらけだった。

 これらの書籍は、出版元の電子メールアカウントと関連付けられており、販売されたすべての電子書籍と紙の書籍の印税を受け取るためにこのアカウントが使用された(Shershnyov氏は他のアカウントとともに自分個人の電子メールアドレスも使っていた)。アカウント1つにつき数百冊の電子書籍が出版されている。1つのアカウントが押さえられたり無効になったりしても、全体の計画は打撃を受けなかっただろう。

 こうしたアカウントを合わせて利用することで、電子書籍のダウンロード数を人為的に押し上げ、Amazonのチャートで個々の電子書籍のランキングを上昇させる。そのように目立つと、本物の読者が誘い込まれる。

 サーバにホストされていた1つのテーブルには、8万3899件の偽のAmazonアカウントが保存されていた(これは造作もないことだっただろう。米ZDNetが確認したところ、Amazonは電子メールアカウントを検証していないからだ)。これらのうち何十というアカウントが四六時中、200以上のプロキシサーバ(第三者のインターネット企業が提供)を介して送り出されるとあっては、Amazonでログインを検出するのは非常に困難だ。サーバには「Selenium」というウェブドライバがインストールされていた。Seleniumはブラウザ自動化ツールで、本物の人間がアカウントのユーザー名とパスワードを次々と入力しているように装うことができる。

 ログインがすべて成功するわけではなく、一部はブロックされたり、禁止されたりする。そうなった場合、テーブルに失敗が記録され、次のアカウントに移る。

 偽のアカウントは、これらの電子書籍を短期間(通常は数時間)で何百冊もダウンロードする。宣伝される電子書籍は、少しの間は無料で公開できるため、ダウンロードを実行しても追加のコストがかかることはない。無料の書籍では印税が発生しないが、Amazonのチャートでユーザーの目に触れる機会が増えるという効果はある。

 匿名希望で情報をくれた著者によると、そのようにユーザーの目に触れると有料版の売り上げも上がり、出版元が儲かるのだという。

 「無料にした結果Amazonで目立つようになると、関心が高まるというメリットがある。元の価格に戻ってからも、高まった関心や注目度がすぐに消えたりはしない」(同著者)

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提供:Screenshot: ZDNet

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