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アマゾンの電子書籍で不正に利益--「キャットフィッシング」詐欺の実態

Zack Whittaker (ZDNet.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル2016年10月05日 07時00分
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 ニューヨーク発--Emma Moore氏は、皆が一生をかけて探し求めていた健康と減量の「教祖」的存在になっていたかもしれない。

 Moore氏の作品を知らなくても無理はない。よくある名前だし、同様の成功を収めている似たような名前の作家がAmazonに複数いる。先週まで、同氏は健康やダイエット、料理、減量に関する自分名義の電子書籍を多数発表していた。2016年に入ってからAmazonで十数冊の電子書籍を出版しており、9月だけで5冊の電子書籍を出版している。Moore氏は、Nina Kelly氏やAndrew Walker氏、Julia Jackson氏など、ほかの作家との共著もある。これらの作家も全員がそれぞれ2016年に10冊前後の電子書籍を出版している。

 この話の落とし穴はこうだ。われわれの知る限り、Moore氏は架空の人物である。先に紹介したほかの作家たちも同様だ。

 Mooreという名前は、Valeriy Shershnyov氏がはたらいた、高度な「キャットフィッシング」と呼ばれる詐欺で使われた何百もの偽名の1つにすぎなかった。バンクーバーに拠点を置くShershnyov氏のビジネスは、Amazonの顧客を騙して、劣悪な品質の電子書籍を購入させるというものだ。これらの電子書籍は、ボットとスクリプト、仮想サーバで構成される悪意あるシステムによって、同オンラインマーケットプレイスでの評価が水増しされていた。

 キャットフィッシングは新しい手口ではない。その歴史は詳細に記録されている。金を払って偽のレビューを書かせる詐欺師もいれば、ほかの手口でシステムを不正に操作しようとする詐欺師もいる。

 これまで、こうした詐欺の仕組みを詳細に調べることのできた者はいなかった。これらの電子書籍にある程度の内容があると信じ込まされた純粋な購入者を食い物にして、莫大な額のロイヤリティを発生させてきた、これほど大規模な詐欺となると、なおさらだ。

 Shershnyov氏は詐欺用のサーバを怪しまれないように控えめに使うことで、2年間、Amazonから隠れ続けた。

 最終的に同氏の正体を暴露したのは、顧客からの苦情でもなく、Amazonによる摘発でもなかった。それは、ありがちな不注意によるものだった。同氏はサーバにパスワードをかけるのを忘れていたのである。

詐欺の仕組み

 Shershnyov氏は「起業家」に転向した元エンジニアである。

 同氏は10年あまりの間、Microsoftなどさまざまな企業でソフトウェア開発エンジニアとして働いた後、Alteroxityというスタートアップを共同創設する。Alteroxityの触れ込みは、「すべてお任せ」で電子書籍の出版をサポートするというものだった。執筆から製本、発行、さらには「良心的なプラス評価のレビュー、数十件」まで含まれるという。

 同社は、公式な記録によれば正規の企業となっているが、主な収益源はShershnyov氏のキャットフィッシング行為だ。現在までの売り上げは300万ドルを超えている。

 Alteroxityのもう1人の共同創設者Alex Gorov氏は、架空の人物だ。Gorov氏は最近まで、「2000タイトル以上の『Kindle』本を出版」した経験から、その秘訣を伝授するとうたうオンライン講座を販売していたとされる。Alteroxityのウェブサイトに掲載されている写真は、ストック画像サイトのものだったことが、後に判明した。

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