KDDI田中社長に聞くiPhone 7/7 Plusの販売戦略--ネットワーク改善も顧客体験重視で - (page 2)

 ユーザーの満足度を高めるという意味でいえば、注目されるのがネットワークに関する施策である。NTTドコモはiPhone 7/7 Plusが3つの周波数帯を束ねて高速化するキャリアアグリゲーション「3CC CA」に対応したことを受け、両機種が下り最大375Mbpsの通信速度に対応することをプレスリリースで打ち出し、高速性をアピールしている。

 またソフトバンクは9月8日の発表会で、5Gの要素技術の1つとされている、多数のアンテナ素子を用いて同時に多くのユーザーが通信できるようにする「Massive MIMO」を、グループ企業のWireless City Planningが運用するTD-LTE互換のAXGPネットワークに導入することで、ユーザーの実効速度を高めることを打ち出している。

ネットワーク改善、重要なのは「エリアよりも利用場所」

 ではauは、どのような方法でネットワークの強化を進めようとしているのか。1つは2GHz帯の帯域幅割り当てを変えることだと、田中氏は話す。auが持つ周波数帯のうち、20MHz幅ある2GHz帯の帯域を、全てLTEに割り振ったエリアを拡大することにより、実効速度を向上させるのがその狙いで、既に78%の人口カバー率を実現していることから、これを拡大することで幅広いエリアでの高速化を見込んでいるとのことだ。

 そしてもう1つは「ULCA」(UpLink Carrier Aggregation)の導入である。これは従来ダウンロード時の通信にしか用いられていなかったキャリアアグリゲーションの技術を、アップロード時の通信にも用いるというもの。UQコミュニケーションズのWiMAX 2+ネットワークにULCAを導入することにより、WiMAX 2+のエリアに限られるが上り最大20Mbpsの通信が可能になるという。auはWiMAX 2+の周波数帯活用に起因する要因や、LTEの周波数帯域が抱える問題などからアップロード時の通信速度が遅いといわれてきたことから、ULCAの導入によって高速化を進める考えのようだ。

 また田中氏は、ネットワーク改善で重要となるのは「エリアよりも利用場所」と話している。それゆえ多くの人が訪れる場所、特に都市部の通勤路線などでハイスピードが出るよう、今後もチューニングを進めていくとのこと。最大速度よりも実効速度を高速化することが、ユーザーの体験価値向上につながると田中氏は考えているようだ。

 ちなみにWiMAX 2+は、Softbank 4Gと同様TD-LTE互換のWiMAX 2+を採用していることから、ソフトバンクが導入したMassive MIMOも導入しやすいと見られている。この点について田中氏は、「(Massive MIMOの)評価は進めているものの、現時点での導入はまだ早いと考えている」と答えており、現時点では2GHz帯の拡張とULCAという比較的ベーシックな手法を採ることで、スループット改善を進めていく方針を示している。

KDDIも今回からApple Watchを販売予定だ
KDDIも今回からApple Watchを販売予定だ

 iPhoneユーザーの顧客体験価値を高める上で、もう1つ欠かせないのが周辺機器の取り扱いである。今回の発表で、田中氏が最も気に入ったのは「Apple Watch Series 2」と話しており、「50メートルの(生活)防水に対応しているのには驚いた」と話すなど、特にテクノロジの面から、Apple Watch Series 2に高い関心を示していたようだ。

 そうしたことからか、auでは今回のApple Watch Series 2より、初めてApple Watchの販売を実施するとのこと。「アーリーステージなので、販売に慣れていく必要がある」(田中氏)として、まずは直営店からの展開になるようだが、オンラインショップでApple Watch Series 2単体を購入した場合を除き、割賦販売にも対応するとのことだ。

 また今回の発表会では、Apple Watch Series 2だけでなく、Beats By Dreのヘッドフォン新製品もいくつか発表がなされている。こちらに関しては「できれば他社に先駆けて、積極的に取り扱いを考えていきたい」と話しており、アクセサリの取り扱いに対しては積極的な姿勢を見せている。

取材に答える田中氏。iPhone 7/7 Plus導入時のネットワークの強化策に関して、田中氏は2GHz帯の拡張とULCAの活用を進めていくとの考えを示した
取材に答える田中氏。iPhone 7/7 Plus導入時のネットワークの強化策に関して、田中氏は2GHz帯の拡張とULCAの活用を進めていくとの考えを示した

 サポートの充実も、満足度を上げる上で欠かせない要素だ。auでは「auスマートパス」への加入で、最大1万円分のiPhone修理代金を2回負担する仕組みを用意している。さらに6月にはau SHINJUKUでiPhoneの修理拠点を開設しており、今後修理拠点はより拡大していきたいとの考えを、田中氏は示している。

 田中氏によると、iPhoneの最大の商戦期は、春よりもやはり新機種発表直後の時期であるのこと。それだけに「これから数か月が勝負」と田中氏は話しており、顧客体験価値を高める取り組みを一層拡大し、iPhone商戦を勝ち抜きたい考えのようだ。なお、ソフトバンクが月額6000円で20Gバイトまで使える料金プラン「ギガモンスター」を打ち出したことに関して、田中氏は「対応を真剣に検討している」と回答。その後9月9日、ソフトバンクに対抗した「スーパーデジラ」を発表している。

10月下旬にも新たなワイヤレスヘッドホン「AirPods」を発売
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