1999年に設立されたIT業界専門の人材紹介会社Speak With A Geek(SWAG)は8月下旬、匿名の採用審査における驚くべき実験結果を明らかにした。
匿名審査では、候補者を特定できる詳細情報が取り払われ、雇用主は技能だけで判断する。性別や人種だけでなく、応募者がどこの学校を出たかも、選考では考慮されない。
SWAGは2回にわたり、同じ候補者5000人を同じ雇用主グループに提示した。1回目は、氏名、経験、経歴などの詳細が提供された。選考の結果、面接に進んだ人のうち5%が女性だった。
次にどうなったかは、容易に推測できるだろう。候補者を特定できる詳細情報を伏せると、この数字は54%に急増した。
IT業界の多様性は大きな問題になっており、Apple、Facebook、IntelなどのIT企業は取り組みの進捗を示す年次レポートを公開している。ただし、数字の多くは精彩を欠いており、毎年ほとんど改善していない。たとえば、Appleが8月に公開した最新の多様性レポートによると、同社は従業員の32%が女性で、前年比では1ポイント増加したという。多くの企業は、多様性が進まない原因を特定しようとしているが、女性やマイノリティの求職者がはじかれたり見過ごされたりするのには、さまざまな要因がある。
SWAGは、そうした問題に焦点を絞っているようだ。
性別や人種に関する情報を取り除くと、意識的にせよ無意識的にせよ、雇用主が偏見に基づいて採用を決めるのを防げるかもしれないとSWAGは述べた。意識的な偏見の例としては、女性は男性ほどプログラミング技術に長けていないという固定観念が挙げられるだろう。無意識的な偏見は、これほど分かりやすいものではない。企業が男性を選ぶ理由は、プログラマーは男性であるべきという、雇用主の根拠のない考えに基づくのかもしれない。
匿名審査そのものは、新しい手法ではない。The New York Timesの記事によると、複数の交響楽団は1970年代、音楽家のオーディションを行う際、仕切りで隔てるようになったという。ハーバード大学とプリンストン大学の研究者らは、匿名審査を用いると、女性が交響楽団に採用される確率は25%から46%に急増したことを発見した(PDF)と、記事には書かれている。
企業の中には、匿名審査を行う手段を提供しているところもある。たとえばGapJumpersは、採用過程から経歴情報を排除できるよう支援している。雇用主はまず、特別に設計された技能テストのスコアによって候補者を知ることになる。また、「Blendoor」(ベータ版)は、候補者の氏名と写真を見えないようにするモバイルアプリだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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