iOS 10では、重要な「スマートフォンの生活機能」としてApple Payが位置づけられている。今回は、Apple Payの現状と新機能、展望について見ていこう。iOS 10でもApple Payは、クーポンやチケットなどを格納するアプリ「Wallet」の1つの機能という位置づけだ。
Apple Payはこれまで、NFCチップによって取得したトークンを使った店頭での非接触決済に加え、Apple Payの支払いを実装したアプリ内の決済に活用されてきた。
小売店やオンラインショップからは手数料を取らず、決済を行う銀行が、決済ごとの手数料をAppleへ支払う形で成立している。そのため、導入する店舗にとっては、NFCに対応するカードリーダの導入、あるいはアプリでのApple Pay決済のサポートのみで対応可能だ。
Apple Payでの支払いに使われるトークンは、不正利用が合った場合に破棄して新たなトークンを取得するだけでよい。そのため、スキミング被害にあった場合でも実カード再発行の必要がないのだ。利用者にとってカードが使えないタイムラグの発生を防ぎ、カード発行銀行にとっては事務処理の軽減になる。
また、カード発行銀行にとって、不正利用分の保障に関わるコストも下げられる。Apple Payを利用する場合、iPhoneやiPadでは指紋認証、Apple Watchではロック解除されていることが必要となり、カードの磁気スワイプやEMVチップでの読み込みよりも、セキュリティ効果が期待できる。
米国で2014年にスタートしたセキュリティを重視したモバイル決済サービスは、米国内におけるカード発行銀行で、対応店舗を増やしてきた。
筆者はサンフランシスコ周辺に住んで、VisaとMastercardブランドのApple PayをiPhoneに設定している。ただ、残念ながら、Apple Payで行う決済は、カード決済全体の5%程度に留まっている。
CVSやWalmartといった大手小売店との間でのモバイル決済の覇権争いが繰り広げられており、サンフランシスコ周辺であっても、高級スーパーであるWhole Foods Market、ドラッグストアWalgreensで利用できる程度だ。
2015年6月にアナウンスされたモバイル決済アプリSquareの新しいリーダは、ICチップでの接触決済とNFCによる非接触決済に対応し、Apple Payをサポートした。これにより、Squareを導入しているBlue Bottle Coffeeなどの小売店舗ではApple Pay対応が広がった。
Bank of AmericaやWells Fargoといった、サンフランシスコを本拠とする大手銀行が発行するデビットカードを登録すると、iPhoneやApple Watchだけで、ATMからの現金の出金もできるようになった。普段セキュリティのために銀行のカードを持ち歩かないことが多いため、非常に便利な対応だ。
加えて、英国を皮切りに、カナダ、オーストラリア、中国、香港、シンガポールなどの各国でもサービスを開始し、現在Apple Payが利用できる場所は300万カ所に上る。現在、Appleが得ている手数料収入の半分が、米国外からもたらされるものだという。
また、2015年から、ストアブランドのクレジットカードや、チェーン店のポイントカードも扱えるようになった。
たとえば、普段はVisaカードのApple Pay決済を行うが、衣料チェーンKohl’sを訪れた際には、ポイントが付与されるKohl’sカードにチャージされた金額から決済をするなど、位置情報に応じた使い分けを自動的に行える。
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