一般の人がVRコンテンツでやってみたいことを考える上で、「ゲームでもアトラクションでもない」(小山氏)という考えから、コンセプトを“大人がやりたくてもできないこと。それが現実のように実際に体験できること”に据えた。それは施設名の「Project i Can」にもつながっており、体験できるコンテンツを「VRアクティビティ」と名付けた。
VRは体験しないと魅力が伝わらず理解しにくいというのは、VR界わいで多く聞かれる課題のひとつ。VR技術のすごさをアピールするのもひとつの手段だが、「感情に訴えかけた方がいい」というのが2人の見解で、そう感じた理由を田宮氏が語った。社内でもVRの魅力を伝えるのに苦労したが、地上200mの高所にせり出された板の上を歩くアクティビティ「高所恐怖SHOW」を体験している人の映像を見せると、多くの人が「面白そう」と興味を持ち、そこから潮目が変わったという。このときに、人間の感情なら他の人が見ても信じられると感じたと語る。
こういったことから施設のキャッチコピーを「さあ、取り乱せ。」と付け、宣伝費も決して多くはかけられなかったが、その投入先を高所恐怖SHOWを体験している人の反応を中心としたムービー1本にかけたという。
そして施設運営に関するデータも公開された。利用年齢層は20~29歳が最も多く、滞在時間は最大90分としているなかで、利用額は1人あたり3000円前後。700~1000円に設定した価格帯もおおむね受け入れられているという。現状でも予約が埋まり続けている状態で、人気の施設として認知されている。小山氏が掲げたハードルはクリアできたといってもいい状態だ。
この講演が行われた8月25日までの段階で、施設には8つのアクティビティが導入されたが、人気のランキングは高所恐怖SHOWがトップで、ほかにもホラー実体験室「脱出病棟Ω(オメガ)」や巨大ロボに乗り込む「アーガイルシフト」、急滑降体感機「スキーロデオ」など、本能に訴えかけるようなアクティビティが人気を集めたという。
この要因として小山氏は、キャッチコピーの力を挙げた。“取り乱せ”と付けられた施設に足を運ぶなら、やってみたいものは“取り乱しそうなもの”になるというのが2人の見解だ。運営途中でドームスクリーン型のレースゲーム「リアルドライブ」をラゾーナ川崎にあるnamcoラゾーナ川崎店に移設したのだが、VR ZONEにおいて“取り乱さなさそう”なものとして人気が低かったものの、移設によって人気を集めるようになったと小山氏は説明。このことからも、キャッチコピーや第一印象はすごく大事だと語った。
VR ZONEにおいて、運営途中から導入されたVR-ATシミュレータ「装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎」についても触れた。ボトムズをテーマにしたのは、小山氏が大ファンだということも多分にあるとしたが、それ以外にもVRゴーグルを活用して3D空間内を自由に移動できるコンテンツに挑戦したかったという。またコックピット視点で見たときに、現実の人間とかけ離れた十数メートル級の巨大なマシンになるとかえって驚きが少なくなってしまうため、ボトムズのような4メートル程度のロボットが最適だったとも付け加えた。
そしてボトムズのアクティビティが導入されて以降、田宮氏が「異常値」と表現してしまうほど、来場者の年齢層が大幅に変化。明らかにボトムズ世代であろうという40代の来場者が、20代を超える勢いで増えたという。このことから小山氏は、20代の“VR世代”と、40代の“バーチャルリアリティ世代”には、深い溝があると感じていると語る。
8月26日からは、有力なIPである「機動戦士ガンダム」をテーマとする「ガンダムVR ダイバ強襲」を投入。等身大ガンダムとモビルスーツとの戦いに遭遇した一般人というシチュエーションのもと、そのガンダムの手にしがみつき、生身の人間として実物大モビルスーツ同士が戦う様子を、すぐ目の前で体験できるというものになっている。
小山氏は、ガンダムに搭乗したり操縦するタイトルやコンテンツは戦場の絆をはじめとして数多くあることから、手に乗せるというシチュエーションを提案。一方、当初はお台場を飛び回るということを考えていたそうだが、田宮氏からガンダムらしさを出すならばバトル要素を入れたいとして、このような形にまとまったという。
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