先ほどの金属プレートを上から装着する際、各ユニットの爪をうまく穴に入れる必要があるのだが、爪が浅いため少しの衝撃でプレートが外れてしまう。また、シャッタースピードのダイヤルと金属プレートは連動しているため、ダイヤルとプレートの位置も把握しておく必要がある。おすすめは、ダイヤルの一番端にあるバルブ撮影の「B」で固定すること。
セレン光電地を固定し、配線に再ハンダを施す。また、シャッタースピードの値を本体に伝えるレバーも取り付ける。ちなみにこのレバー、シャッタースピードに合わせて傾きが変わり、その移動量で露出値を伝達する。これの伝達には、本体の自動露出機構側の突起にひっかける必要がある。
しかし、適当なシャッタースピードでレンズユニットを本体に取り付けると、突起が当たらず、自動露出機構が機能しなくなってしまう。最初、これに気づかず、カメラを組み上げたときに自動露出が動かなくなり、焦ってしまった。
これを回避するには、シャッタースピードをバルブ(B)にセットすること。レバーの傾き的にうまく突起に当たるようになる。ちなみに、このレバーの傾きが狂ってしまうと、適正露出よりオーバー、あるいはアンダー気味になってしまう。何度もレンズユニットを外して傾きを調整する羽目になってしまうので注意が必要だ(実はレバーに付けたマーキングが消えかかってしまい、実際にそうなってしまった)。
あとは、表裏のレンズを再度取り付け、慎重にレンズユニットを本体に取り付ける。ほぼ修理は完了したかに思えたが、シャッターを切ってみると、新たな問題が発覚した。
キヤノネットの自動露出機構は、シャッターボタンを半押しすると、セレン光電地の起電力に応じて露出の値を示す。この値をファインダー内で示すカウンターの戻りが鈍くなっていたのだ。このカウンターに関連するギアなどに、微量のミシンオイルを塗布すると、スムーズに動くようになった。
最後は、ファインダー内の露出値を示す表示板の修理。小さいパネルのため、ピンセットを使いながら接着剤で固定する。あとは、ファインダーのピントがきちんと合っているか。無限遠でファインダー内の二重像が重なるピントリングの位置に、無限遠のマークがきているか確認する。特に問題もなかったため、そのまま組み上げての完成となった。
時間の空いた休日などに作業していたこともあってか、修理完了までに1カ月かかってしまった。しかし、機械式カメラの構造を知るには良い勉強になったと思う。今では友人の手に渡り、日常を切り取っているようだ(記事最初の写真は友人が撮影)。
この個体以外にも、2台のキヤノネットを修理することになり、それぞれ別の友人の手に渡った。キヤノネットは、カメラ屋のジャンクコーナーで500~1000円で積まれてあることが多いので、この記事を読んで気になった読者の方は、ぜひ修理してみてほしい。夏休みの自由研究としても最適だ。
実は、今年の4月に100円でキヤノネットを購入してから“フィルムカメラ沼”に無事浸かってしまい、たった4カ月で家に25台ほどのフィルムカメラが集まってしまった。これまで、ニコンの「FE2」は持っていたものの、あまり持ち出すことはなく、ほぼデジタルのみで写真を撮っていた。
今では、「コンタックス」がお気に入りだ。ドイツCarl Zeiss傘下のカメラメーカーZeiss Ikonが所有していたブランド「Contax」では、戦前の「Contax II」、戦後まもなく西ドイツのZeiss Ikonが発売した「Contax IIa」、東ドイツ側のZeiss Ikonが出した、現代の一眼レフの先祖にあたる「Contax S」が家に鎮座している。
また、カメラ製造から撤退したZeiss Ikonに代わり、新たなパートナーとして参加した日本のヤシカが世に出した「CONTAX」ブランドのカメラも幾つか所有してしまった(ヤシカを買収した京セラ製も含む) 。もちろん、キヤノンの「F-1」など国産勢も入手済みだ。
次回は、どんなカメラが登場するのだろうか。お楽しみに。
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