脳を刺激して能力を高めようとする製品は、Halo Sportだけではない。不安やうつ病、不眠症などを治療する「Fisher Wallace Stimulator」や、同じくtDCSを利用するがビデオゲームプレイヤー用に特化した「foc.us v2」などがある。
Halo Sportのようなデバイスにどれほどの効果があるのか、答えはまだ出ていない。能力の向上がデバイスの効果によるものであることを裏付けるデータが、十分にそろっていないからだ。一部の脳科学者は、単なるプラシーボ効果の可能性もあると指摘する。つまり、デバイスが役に立つという思い込みで能力が上がったということだ。
「脳の刺激はどんなケースにも効果があるわけではない」。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の神経科学者Ted Zanto氏はこう語り、脳に対するtDCSの効果を測るにはさらに研究が必要だと述べた。「これでアスリートが段階的に良くなるのか悪くなるのか、わたしにはわからない」(Zanto氏)
Chao氏は、懐疑的な見方も無理はないと言う。
「われわれは新たなカテゴリを作り出しているのであり、教育がたくさん必要になるということは理解している。冒険はいとわない」(Chao氏)
冒険をいとわないという点では、筆者も、同僚のLexy Savvides記者とJosh Miller記者も同じだ。いくつかデモを体験するために、Halo Neuroscienceの本社に赴いた。
この649ドルのヘッドセットを装着すると数秒のうちに、前頭葉にちくちくする感覚が走る。それが、振動するリズミカルな波に変わり、頭が動き出す。しかも、かなり動く。筆者はデバイスを8に設定した(最高で10)。カメラマンであるMiller記者が撮影を始めるころには、筆者は集中力が高まったように感じ、さらにおしゃべりになったような気もした。
Chao氏がほほえみ、Miller記者は笑い出す。
別の日に訪れたときには、Savvides記者がHalo Sportを装着しながら握力を測ってみた。技術者によると、Savvides記者の握力は9%アップしたという。
「周囲のことにもっと敏感になっているように感じた。話し方が少し速くなったように感じ、思考もクリアになった気がした」(Savvides記者)
Rodgers選手を魅了しているのは、このように集中力と運動能力が上がる可能性だ。Rodgers選手は1カ月以上にわたってHalo Sportを使い続けており、来週には男子4×100mリレー(ライバルのUsain Bolt選手もいる)に米国代表として出場する。リオでは、ウォーミングアップ中やレースの合間、ウエイトルームでHalo Sportを装着する。
初めのうちは、Rodgers選手もこのデバイスについて懐疑的だった。「脳に電流を流したいかどうか、よくわからない」。Rodgers選手は自身の考えをこう振り返っている。また、レベル10も試したという。
強すぎだった。
「実際のところ、髪の毛が抜け落ちるかと思った。滝のように汗が流れ始めた」と語るRodgers選手は、結局はレベル8に設定して、徐々に10まで上げていった。「今ではマッサージのような感じだ。ひざやハムストリングスではなく、脳のマッサージだが」(Rodgers選手)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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