黒字化の時期は明言できない--シャープ4~6月期、売上高3割減も赤字幅を縮小

 シャープは7月29日、2016年度第1四半期(4~6月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比31.5%減の4233億円、営業利益は前年同期の287億円の赤字から改善したものの、25億円の赤字。経常利益は前年同期の333億円の赤字から223億円の赤字に縮小。当期純利益は前年同期の339億円の赤字から改善したものの、274億円の赤字となった。

 代表取締役兼副社長執行役員の野村勝明氏は、「すべてのカンバニーが前年同期の実績を割り込み、第1四半期の売上高は大幅に減少したものの、米州での液晶テレビ事業のブランドライセンスビジネス化、中国での液晶テレビの体質改善、それに伴う固定費削減効果があり、赤字幅は縮小した。販売減と売価ダウンを、コストダウンやモデルミックス改善などでカバーした。コンシューマーエレクトロニクスの収益が大幅に改善している」と総括した。

シャープ 代表取締役兼副社長執行役員 野村勝明氏
シャープ 代表取締役兼副社長執行役員 野村勝明氏

 「第1四半期は赤字になったが、今後、構造改革を推進するとともに、鴻海との戦略的提携を通じて、事業の安定的な継続に努めていく。体質を固めたところで、売り上げを伸ばしていきたい」(野村氏)

中国での競争法の認可取得を待っている

 セグメント別業績は、コンシューマーエレクトロニクスの売上高が前年同期比24.1%減の1532億円、営業利益は前年同期の117億円の赤字から125億円の黒字に転換した。

 「米州のテレビ事業をライセンス化する一方で、中国での液晶テレビの販売減少、国内スマホビジネスの販売減が影響した。通信事業はスリム化や開発効率化で黒字を維持。ASEAN(東南アジア諸国連合)発で開発した“蚊取空清”をはじめとするプラズマクラスターイオン関連製品の拡大などもあった。今後は、液晶テレビの4Kと8Kのラインアップを強化する。スマホは、国内シェアの拡大に向けて、ラインアップを拡大するとともに、サービス事業の強化を図る。健康家電事業では、クラウドと連携してレシピなどを提案するヘルシオの展開やローカルフィット製品の展開を進める」(野村氏)

 エネルギーソリューションの売上高は前年同期比40.7%減の218億円、営業利益は前年同期の39億円の赤字から悪化し63億円の赤字。太陽電池の販売減が影響しているという。ソーラーパネルの原材料であるポリシリコンの評価価格の引き下げに伴い、契約上の購入価格との差額が拡大したため、買付契約評価引当金繰入額44億7500万円を売上原価に計上したという。

 ビジネスソリューションの売上高は前年同期比3.8%減の775億円、営業利益は前年同期比12.8%減の59億円。国内でカラー複合機が好調に推移するというプラス要素があったという。「今後は、複合機や液晶ディスプレイを核としたソリューション展開を強化していく」とした。

 電子デバイスの売上高は前年同期比45.1%減の750億円、営業利益は82.3%減の5億円。「センシング技術を生かした新規製品などの開発で収益性の改善に取り組む」としている。

 ディスプレイデバイスの売上高は前年同期比37.7%減の1170億円、営業利益は前年同期の137億円の赤字から縮小したものの、107億円の赤字となった。「カメラモジュールの販売減のほか、テレビ用大型液晶の販売減の影響があったが、レーザー、車載カメラ、センサが伸張している。IGZO技術を生かしたPC、車載、タブレット、医療用などへの展開のほか、収益性の高い大型液晶ディスプレイを強化していく」と語った。

 持分法適用会社である堺ディスプレイプロダクトの赤字計上に伴い、投資損失として115億9900万円を営業外費用に計上した。「受注減に伴う操業率の悪化、為替の影響などが営業している」という。

 鴻海精密工業グループとの戦略的提携について野村氏は「6月23日に開催された株主総会で、鴻海による出資が承認されたものの、1カ国(=中国)での競争法の認可取得を待っているところである。認可取得後には、払い込みが行われ、速やかに新体制へと移行していくことになる。1日も早い審査の完了を待っている。ただ、シャープの立場からはその進捗状況は把握できていない。10月5日の払込期限までに審査が完了しないということは考えていない。払込価格の見直しもない。払い込みが行われていないという点では、現時点での経営への影響はないだろう。一刻でも早く新たな体制でシナジー効果を追求したい」と説明した。

 続けて野村氏は「鴻海のいいところはスピード経営。われわれも機敏に対応できる体制にしていくことが大切である。7月に発表した組織改革はスピードを上げていくものとなる。今後、組織の再編を進めることになり、白物家電と黒物家電を切り分けることも検討中である」との見通しを明らかにした。

 「グローバルでの7000人の人員削減は決まったものではない。鴻海の施策として、人員削減策があることも認識していない。だが、グローバルで最適化を図るということには変わりがなく、その中で人員再配置はあるだろう。中間期決算発表前に新たな方針を説明したい」(野村氏)

 2018年に量産化を予定している有機ELについても、「技術開発については継続的に進めており、鴻海の増資払込が行われていないということは技術開発には影響しない」(執行役員 経理・財務本部 経理・財務担当の榊原聡氏)という。

 2016年度の通期業績予想については、鴻海からの払い込み後、シナジー効果の具体的な算定が可能になり次第、改めてお知らせする」としたほか、「トップラインが低い中でここまで改善してきた。早期の黒字化、安定的な黒字化を考えている。だが、黒字化の時期は明言できない」とした。

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