セルフィー(selfie)をご存じだろうか。セルフィーとは自分で自分を撮影すること、あるいは撮影した画像のことを指す。手軽に撮影できるスマホやSNSが流行したことで、一般に広く普及するようになった。観光地などでは、自分で自分を撮影できる「セルカ棒(自撮り棒)」を持っている人をよく見かけるだろう。
15歳以上の男女を対象に調査したMMD研究所の「スマートフォンカメラ利用に関する調査」(2015年1月)によると、スマートフォンで写真を撮った頻度は多い方から、「月に2~3回」(20.3%)、「週に2~3回」(19.4%)、「週に1回」(16.4%)。スマートフォンで写真を撮ったことがあると回答した人に自撮りをする頻度を聞いたところ、「よくある」が2.6%、「たまにある」18.5%を合わせて21.1%、つまり約2割が自撮りをしているという。
さらにTwitter、Facebook、Instagramにおける写真投稿経験について聞いたところ、10代はTwitterでは70.1%と全年代平均30.4%を大幅に上回り、投稿経験が高かった。Facebookは利用率の低さから投稿率も22.4%と平均を下回ったが、逆にInstagramは20.6%と投稿率が平均の倍となった。一般にSNSでは、写真を掲載した方が周囲からの反応率が高くなる。10代はInstagramのような写真SNSの利用率も高く、他の年代に比べてSNSに多く写真を投稿する傾向にあるのだ。
10代において流行中のセルフィーだが、それらの写真をSNSに投稿して楽しむことで問題は起きないのだろうか。
7月7日、ロシア内務省が、危険なポーズでのセルフィーの最中に事故に遭う人が相次いでいる問題を受け、セルフィーは安全な方法で行うよう呼びかける運動を開始して話題となった。
同国では、2015年に入ってからすでに危険なセルフィーが原因で数十人が死亡し、約100人が負傷しているという。10代などの若い層を中心に、銃を構えてセルフィーしようとして誤って自分の頭を撃ったり、鉄道橋に登ってセルフィーを撮ろうとして送電線に触れ感電死したり、ピンを抜いた手榴弾を持ってセルフィーを撮ろうとして爆死するなどの事件が起きているのだ。
このような例はロシアだけではない。ルーマニアでも、18歳の少女が電車の屋根に登りセルフィーを試み、高圧電線に触れて死亡。フィリピンでは14歳の少女が学校の急勾配の階段でセルフィーしたところ、バランスを崩して落下し、死亡している。このような例は枚挙にいとまがない状態だ。
日本においても、10代、中でも高校生は頻繁にセルフィーをしている。女子高生のTwitterを見ると、セルフィー写真が多く並ぶ。自分だけでなく、友達と並んで撮ったセルフィーも多い。多くの女子高生はセルフィーが得意で、得意の決め顔、決め角度などがあるようだ。加工アプリを使い、目を大きくするなどしてプリクラのように加工し、きれいな写真に仕上げる。
「うちらの中では絶対にiPhone。Androidがダサいっていうのもあるけど、iPhone 6はセルフィーが可愛く撮れる。他のスマホより絶対可愛いから、持っている子から借りてiPhone 6で撮る」と高校3年女子A子は、女子高生の中でiPhoneが流行っている理由を断言する。
さらに、「ケータイ安全教室とかで『顔写真はリスクがあるので公開しない方がいい』と習っても、直後にみんな断りなしにTwitterに投稿している。誰も顔写真を公開していいかとか聞かないし、みんなやってる」と言う。「その日遊んだ記念に、Instagramに友達とセルフィーを撮って投稿するのも普通。他のSNSだと色々書かなきゃならないけど、Instagramなら写真だけで楽しそうな雰囲気が分かるし、記録代わりになるから」。
高校1年女子B子は、自他共に認めるセルフィー中毒だ。どこかに出かけるのはセルフィーのため。いい写真を撮ってSNSで公開するために出かけるのだという。「ディズニーランドとか行っても、どんな写真が撮れるかが大事。納得いく写真が撮れるまではアトラクションなんてどうでもいい」と言い切る。先日はなかなか納得がいく写真が撮れず、撮影に1時間弱もかかってしまったという。
B子にとっては「きれいで楽しそうな写真を撮ること」が一番大切なことだ。きれいな写真を残したいし、TwitterやInstagramに投稿すると多くの「いいね!」やリツイートなどがもらえて気持ちがいいというわけだ。ここまでくると完全に本末転倒であり、立派なセルフィー中毒と言えそうだ。
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