プレミアムインタビュー

「俺がアップルならiPhoneを安くする」--DMM亀山会長の“商売論” - (page 3)

俺がアップルならiPhoneを安くする

――亀山さんは以前、「日本人は商売が下手」と話していました。その言葉の意味は。

 日本のモノづくりは技術力が高いし、優秀な人たちが優秀なモノを発明しているんだけど、それをどうやってお金に変えるのかというところは、経営者の仕事だと思う。ただ、どうしても日本のメーカーは、戦略的にビジネスを作るところが苦手なのかな。だから、国に合わせて、この市場でこの値段じゃないと売れないと思ったら、(端末の)スペックを落としてでもとにかく数売るとか。あとは、単にモノを売るだけじゃなくて、そのあとに稼ぐとかね。

DMM.com取締役会長の亀山敬司氏

 たとえば、iPhoneは結構いいものだと思うんだけど、日本は半分くらいシェアを取ってるけど、ほかの国だとAndroidにやられてるじゃない。俺がアップルだったらiPhoneをもっと安くする。その国の所得的に厳しいと思ったら、SIMフリーじゃないものを1~2万円で売って、そのあとにApp Storeとか課金で儲けるかな。あとは、最初に仮に2万円で売ったとしても、みんな慣れちゃうとほかの製品を使いたくなくなったりするじゃない。そしたら、次のバージョンから3万円にして、さらに次のバージョンを4万円にすればいい。

 それ(単体)を売っていくらの商売よりは、そのあとにいかにチャリンチャリン入るようにするかが大事で、メーカーはモノを売って終わりになりがちだから、そういうモデルに切り替えるといいんじゃないかな。

誰かに「価値」を見出すから稼げる

――亀山さんが認める商売人はいますか。

 孫さん(ソフトバンクの孫正義氏)はうまいよね。ドコモの独壇場だったモバイル市場で「価格破壊だ!」って言って、いまじゃドコモとauとソフトバンクと言わせるまでに上げたじゃない。日本のネットを安くしますって言いながら、3割くらい(シェアを)取っちゃったらもう安くしないってことなんだけど(笑)。その辺がうまいよね。ある程度シェアを取ったら、それはそれで利益が出るようにして、今度はその資金を使ってインドとか中国に行こうとしてる。そうやって、みんなの心をうまく掴んで、現実的に稼ぎながら次に行こうって話だよね。

――日本では「金稼ぎをする人」は嫌われやすいように思います。

 あれは風土だね。ビジネスマンはまだいいけど、スポーツ選手なんかはちょっと派手だとすぐ嫌われるよね。「僕はお金なんて興味ないです」って言わないといけない。

 いまは仕事というものが、お金を得て贅沢する手段だと思われてるから、「金を稼ぐのはよくない」と言われるけど、「稼ぐ」ってそれだけじゃないんじゃない。お金を稼ぐってことは、誰かに価値を見出してもらっているから払ってもらえる。お金をもらえること自体が誰かに求められたり役に立っていると見れば、ちょっと考え方が変わるんじゃないかな。

 俺は、日本人の「金のためじゃなく、いいものを作りたくて仕事をしている」という美学は結構好きだよ。でも、もし製品を1つの作品とみるなら、ビジネスや会社も1つの作品みたいに捉えると、ちょっと考え方が変わるよね。これからは、ロボットとかAIが増えて仕事がなくなっていくじゃん。そうなった時に、金のためじゃなく、自分の存在価値とか、人の役に立つことに、仕事のやりがいを見出す価値観が世界中で広がると思ってる。そうなった時に「日本の考え方」は見直されると思うね。

※第2回「亀山敬司氏の“組織論”」は7月2日(土)に掲載

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