Googleは、同社の企業向け製品や活用事例などを紹介するイベント「Google Atmosphere Tokyo 2016」を6月14~15日に開催した。「Googleの機械学習テクノロジーが変える新しい働き方」と題するセッションでは、人工知能(AI)技術をクラウド型グループウェア「Google Apps for Work」へ適用することで得られる効果などについて語られた。
登壇者は、米GoogleからGoogle for WorkシニアバイスプレジデントのDiane Greene氏と、Google for Workエンジニアリング担当バイスプレジデントのPrabhakar Raghavan氏、そしてGoogle Apps for Work導入企業の代表としてフジテック執行役員情報システム部長の友岡賢二氏。
Greene氏は、VMwareの元設立者兼最高経営責任者(CEO)で、ICT業界で豊富な経験を持つ人物だ。セッションでは、企業向けクラウドアプリに対するGoogleの取り組み全般を紹介した。
同氏は、インターネットの普及や検索、クラウドといった技術の恩恵により、情報は限られた数の人だけが持つ特権的なものでなくなったと説明。その中で、新しいアイデアは瞬時に世界へ広がり共有され、その影響で進化が加速し、個人の生活でも企業の現場でも激しい変化が起きていると話す。
また、若者たちは学校で新しい技術を使って学習するようになっており、企業に入っても同じように最新技術の恩恵を得たいと感じていると話す。たとえば、米国の教育機関にはクラウド環境での使用を前提とするGoogleのPC「Chromebook」が多数導入されており、2016年第1四半期にChromebookの出荷台数が「Mac」を上回った。Chromebookやクラウドに慣れ親しんだ層が働くようになれば、企業のICT環境も一気にクラウド化が進むかもしれない。
セッションでは、出席者からGreene氏に対し、Googleのクラウド事業はAmazon.comやMicrosoftに後れを取っているようだが巻き返す策を聞きたい、との質問が投げかけられた。同氏は、クラウド市場はまだ初期段階で企業の利用率が低く、巨大な市場に発展していくし、Googleは以前からクラウドを自社利用してきた経験がある、と自信を見せた。
同様に競争の激しいAI分野についても、Googleには機械学習ライブラリ「TensorFlow」向けにカスタマイズしたチップ「Tensor Processing Unit」(TPU)で学習を高速化できる強みがあるとした。
続いてRaghavan氏は、企業におけるAI活用の意義とGoogleのクラウドアプリにおけるAIの活用例を説明し、新たな情報提供サービス「Google Springboard」の早期導入プログラム拡大と、ウェブサイト構築サービス「Googleサイト」のリニューアルに触れた。
GoogleがAIを重視する姿勢は、同社CEOのSundar Pichai氏の「モバイルファーストからAIファーストへ」という発言でよく分かる。そして、企業の現場でAIが必要とされる根拠として、Raghavan氏は爆発的に増加しているコミュニケーション量を挙げた。
具体的には、1970年代に電話などのコミュニケーション件数は年間5000件ほどだったものが、現在はメールなどが増えて年間5万件にもなるという。
その結果、企業で働くマネージャーはコミュニケーションに忙殺され、自分の時間が週平均6.5時間しかとれないそうだ。さらに、検索技術によってアクセス可能な情報の量も増え、人間の知能で処理可能な情報量を上回っている。
Raghavan氏は、この知能と情報のギャップを埋め、情報に溺れる状況から救い出してくれる技術がAIだとした。つまり、AIの重要性に気づいた企業が生き残るわけだ。
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