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クラウドソーシングから生まれた「CGS」で変貌するビジネス-- うるるが実践 - (page 2)

別井貴志 (編集部)2016年05月20日 13時49分
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 このようにクラウドソーシングやCGSが説明された後、2部ではうるる代表取締役である星知也氏と、CGSのビジネスモデルに早くから着眼していたインキュベイトファンドの代表パートナーである本間真彦氏が「CGSの価値」について対談した。2人は、この場が初対面だという。以下は、そのやりとりだ。

うるる 代表取締役 星知也氏 うるるの代表取締役である星知也氏

:まずは軽く自己紹介から。札幌生まれの札幌育ちで、2005年にうるるを創業しました。札幌ではまったく仕事にならず、地方のつらさをひしひしと感じ、すぐに東京にでて“在宅ワークのスタンダード化”という創業当時のビジョンを掲げて、BPO事業をしたり、シュフティのクラウドソーシング事業をしたり、そのクラウドソーシングサービスを活用したCGSという、われわれがたどり着いたビジネスモデルを多数展開してきました。

本間:私は普段シンガポールにいます。インターネット関連で起業しようとしている、もしくは起業したばかりというチームに資金を提供し、成長させていくというビジネスです。ここ数年はスマートフォンのゲームなどで大きなトレンドがありましたが、2012年、2013年ぐらいからは普通にアプリケーションを開発するだけではなかなか大きなインパクトにならず、使ってもらえるようなサービスにならないと悩んでいました。そのときに、ソフトウェアやサービスと人を組み合わせたほうが結果として大きなインパクトが生まれるということに気づきました。そして、先の説明のなかにも出てきた家計簿アプリのBearTailなどに投資をしていくようになったのです。

:本間さんがCGSに注目された理由や時期は?

インキュベイトファンド 代表パートナー 本間真彦氏 インキュベイトファンドの代表パートナーである本間真彦氏

本間:ゲームの投資をやっていて感じたのは、実はソーシャルゲームの裏側は人で動いていることです。はじめは、あんなゲームはダメだと。コンシューマーゲームに比べるとグラフィックスもぜんぜんよくないし。さんざん言われても、結果としてユーザーに支持されるゲームが登場するのは、結局は人が動いていたということに気がついたのです。サービスを設計していこうとしたときのユーザーエクスペリエンスとして、ソフトウェアで何かやっても、、こんなものか……ということが多くて、そこに人が介在してアウトプットしていくと、非常におもしろいものができるということを投資先の経験でわかりました。

 あと1つ、私は投資家なので世の中のはやりというか、どういうものが次に来るのか、ということをよくシリコンバレーの人たちとリサーチしますが、UberやAirbnbなどの空いたスペースの有効活用を考えていくと、クラウドワーカーにたどり着きます。そうすると、人の空いているリソースをいかに活用してサービスを作るかということと、人を介在したほうがサービスのインパクトが強くなるということの2つを掛け合わせていく形に自然となりました。星さんのように問題意識を持って考えたというよりは、サービスが当たるにはどうしたらいいか、投資家としてリターンを最大化するにはどうするかを考え、結果的にたどり着いたというのが実感です。ゲームの後に新しいイノベーションを創らないといけないと思い始めたのが、2010年、2011年ぐらいなので、それぐらいから取り組みはじめたと思います。

:実際CGSのビジネスモデルになっている企業やサービスは多くなってきたと思いますが、これからも増えていくでしょうか。キャピタリストの視点として。

本間:そういう傾向にあると思いますね。日本はクラウド系のサービスを設計するときに一番難しく、すぐにボトルネックになるのが供給サイドなのです。ベビーシッターのサービスやお年寄りの見守りサービスなどは需要が高そうですよね。しかし、その働き手をどうするのか、というのがすぐに課題になるのです。供給サイドさえあれば(クラウドワーカーを活用すれば)日本はある意味、課題先進国でもあるのであらゆるサービスの需要を満たせるのではないでしょうか。

:われわれはシュフティというクラウドソーシングサービスを運営していますが、クラウドソーシングサービスだけを運営している企業をどう思いますか。

本間:僕は当初から一貫して、QOS(Quality of Service、サービスの品質)というか、サービスの担保をきちんとやらないとビジネスとしてうまくいかないと思ってます。特にサービスを開始するときに感じます。マッチングだけにしてしまうと、どうしてもサービスの提供者側がコントロールできなくなります。クラウドワーカーだからいいとか、社員だからだめとか、そういう問題ではなくて現実的にはブレンドになるというか、サービスを受ける側はクラウドワーカーだろうが、社員だろうが、アルバイトだろうがまったく気にしていませんね。すごく緊急性の高いものは社員でやらなくてはならない場合がありますし、時間的にバッファがあるときはクラウドワーカーでいい場合がありますし。結果的にコストと便宜を最適化する調整ができる企業が伸びるんじゃないかと思います。

:われわれがCGSというモデルに行き着く過程で、逆に質問はありませんか。

本間:さきほどの1部での事例やアイデアの説明を聞いて、特に入札情報の話とか、僕もブレストに加わりたいと思ったんですが、BtoBの世界でクラウドワーカーを活用しようとしたきっかけや、社内でGOサインを出すときの基準などを教えてもらえますか。

:もともと、在宅ワークの標準化というビジョンで在宅ワーカーを集めていて、当時はまだクラウドソーシングという名前もありませんでした。一方で「名刺を100枚Excelに入力してください」といったデータ入力の受託業務など、収益を稼ぐ事業としてBPOを展開し、そういった仕事を在宅ワーカーにお願いしていました。そして、BPOの受託業務の過程で、国からデータ入力の仕事がたくさん出てくるということを知ったので、では厚生労働省からはどういった仕事があるのか、文科省からは、と見ていったら、きりがなくなってきて。

 じゃあ、こういう仕事をまとめているサービスはないのかと探したら、いくつかあったんですが、すべて情報をクロールして機械的に情報を集めていました。そうしたサービスが提供している情報と、厚労省などのサイトに実際に掲載されている情報とを突き合わせると、漏れている情報が非常に多く、これでは気持ち悪いなと思いました。われわれデータ入力の企業が請け負えるサービスが世の中にどれだけあるか、ぱっと見せられたらすごくおもしろいのではないかと考えたのです。

 そこで、シュフティという在宅ワーカー、いまでいうクラウドワーカーのリソースがあったので、官公庁のウェブサイトをすべてチェックしてもらい、人力で抜け漏れがないように収集してもらいました。すると、データ入力の案件がたしか20~30件ぐらいヒットしたんです。しかし、実際に集まったデータは入札情報などが数千、1万いかないぐらい集まってました。データ入力の案件を探していたわれわれにとっては、これらは必要のない情報ですが、もったいないじゃないですか。そこで、これは自社だけで使うんじゃなくてサービス化していこうと考えたんです。それでNJSSというサービスが生まれました。当時はCGSという概念は特になかったですが、ただわれわれができることを形にしたというところです。

本間:そうでしたか。BtoCを中心にサービスの設計を考えていると思っていたので、説明してもらった事例やNJSSの話を聞くと、BtoBはまだまだ相当ありそうだなという気がしました。僕も投資先の候補の拡大を(笑)。あとは、スタートアップで投資先を見ていると、システム面での技術力はある程度投資が必要ですし、一方で目に見えない人の管理をけっこうしなければいけないので、その辺りでなにかアドバイスはありませんか。

:いま27万人のクラウドワーカーを抱えていますが、中には7カ国語話せるといったものすごいレベルの方もいらっしゃいます。でも、産休、育休でいまは仕事していませんといった方がたです。やはり、外には出られないけど働きたいというモチベーションの方はすごく多いです。働く側の期待に応えることはできるのですが、それをいいことに、とにかく安い単価でも受けてくれます。業務委託なので、時間給ではありません。1件いくらという形で、基本的には仕事をしていただきます。それをもし、時間給に換算するといくらになるのかを試算すると、時間給200~300円ぐらいでも引き受けてくれてる計算になるんです。それを続けてしまうと、業界全体の話もそうですが、サービスとしての品質管理やコミュニケーションの管理など、いろんなそれ以上のコストが結果的にかかってきます。あるいは、サービス自体が始まらない。たしかに、安くても人は集まるし、成り立つが、そこだけ考えていたら、サービスを立ち上げることはできないと思います。

本間:そのために具体的に企業としてアクションしていることはありますか。

:CGSを多数展開していますが、おそらくシュフティを一番活用しているのは僕らだと思います。僕らが具体的に気をつけているのは、もしワーカーの時間給に換算したら最低でも500円になるようにはしようと。問題がなければ時間給換算で1000円とか2000円とか稼げるような報酬形態で1件いくらというのを提示しようと。そうすると、ワーカーとの連携もとれます。ここを非常に心がけています。

本間:特にお母さんや若い女性で、家で子育てしている方とか、オフィスに月曜日から金曜日まで朝から晩まできなさいという働き方をすると、結局働き手の数が頭打ちになってしまいますよね。そういう人たちが働きやすいように事業者側が歩み寄らないといけません。かつ、ベビーシッターにせよ、介護にせよ、いろんなクラウドワーカーを活用できる需要があるにもかかわらずです。結局、働き手のことをどう考えていくかというのが解けたら、すごくおもしろい課題だと思います。

:もともと「在宅ワークという働き方をスタンダード化したい」、「アルバイトや派遣、正社員などいろいろな働き方はあるが、大学を卒業して在宅ワーカーになるというぐらいの位置づけにしたい」と思って起業してるので、「在宅ワーカーは安く使えるから使おう」ということではないのです。在宅ワークで生計が立てられる、あるいは子どもが寝たこの1時間といった隙間時間で収入を得られるといったような働き方を、きちんと社会の中で認知させて、ひとつの働き方として確立させようというのが僕らの根っこにあります。単純に企業にとって安く使える、すぐ立ち上がる、失敗しても痛くない、といった企業面はあるものの、在宅ワーカー側をどのように正しく成長させていくかを僕らは標榜しています。これらをきちんと確立していかないと、企業側も活用してくれなくなります。

本間:CGS協会を発足して、具体的に会員になるのは無料だそうですが、どういう活動をされているのでしょうか。

:まだ発足して1年足らずですが、CGS事業についてアイデアベースでは何百という数が挙がってます。これはシュフティを活用するには不向きだとか、シュフティじゃないところを活用した方がいいなとか、いろんな取捨選択や議論をする中で、かなりの経験や知見を得ました。みなさんが、これからCGS事業を考えるときに、こういうリスクやデメリットがあるとか、僕らなりに伝えられます。そもそも、ベンチャー企業は集まるのが好きですし、1つ1つは小さい企業ですので、集まって大きな団体にして影響力を持ち、CGS全体の産業の拡大と社会への価値提供を考えて行きます。新しくCGS事業を開始したいという方に有益な情報を提供できるでしょう。

本間:私も日本で新しい事業をやるときに、需要が明確にあって、あとはどう形作っていくかというインフラが足りない業界は限りなく少ないととらえています。そういう意味だと、CGS協会を設立してある程度認知が広がらないとそういう働き方がスタンダードにならないですね。私ももっと広げていきたいと思います。

星知也氏 本間真彦氏 終始和やかな対談だった

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