本連載では主にドローン先進国、また日本国内のドローン事情をお伝えしてきた。今後はあまり読者の元に情報が入ってこないであろう都市の情報も現地からお届けしていきたい。今回はインドを取り上げる。
インド政府は2014年10月、国内において無許可でのドローン利用を原則禁止とした。背景には隣国パキスタンとの間の緊張関係がある。2015年7月に、パキスタン郊外の国境付近で、両国が領有権を主張するカシミール地方を偵察するためにインドから飛ばされてきたとされるドローンが撃墜された。インドの外務省と国防省は、この件についていずれもコメントを控えている。
原則禁止の措置は、こうした事態が一般市民の操縦ミスや悪意によって生じ、外交問題へと発展しないようにするためである。また、市民が自由にドローンを飛ばすと、逆にパキスタン側が飛ばしてきたドローンとの見分けがつかなくなってしまうからとも言われている。
このように、インドのドローン事情は緊張している一方で、政府からの許可を取得した範囲で、その利用は広がり始めている。目的としてもっとも挙げられるのが結婚式での空撮。国内の利用用途の8割近くをこれが占めているといわれる。そのほかの用途は大きく3つだ。
1つ目が、政府や警察による利用。2015年、デリー東部のトリロクプリで暴動が起こり、暴徒らが酸を入れた瓶など多くの武器を保持していたため、警察は鎮圧に向かったものの、容易に近づくことができなかった。そこでデリー警察はドローンを利用して武器を押収し、暴動を抑えた。
2つ目が、建設やインフラ領域での利用。国民の重要な足である長距離鉄道の建設において、国立鉄道会社が工事の進捗確認のため、3日間で98Kmの範囲を空撮した。また、地場のスタートアップは、土地測量や3Dマッピングのサービスを建設会社などに提供している。
3つ目が、人口の半分以上が従事する農業での利用。ある地元企業は農村地帯をドローンで空撮することで、作物の病気や害虫を発見し、農作業の効率化に貢献しているという。
そのほか、ニューデリーの大学は、渋滞が問題となっているデリーや車で向かうことが困難な農村地域への医薬品の配送に利用する実験を開始。また、デリーに住む16歳の少年3人組のチームは、世界一といわれるデリーの大気汚染問題の解決にドローンを駆使して取り組んでいる。
このように原則禁止とされつつも、ドローンが有意義に活用されていることがわかる。
産業利用もふくめ、ドローンの活用が進むインドで存在感を放っているドローン企業、またドロニストがPixelDo社のCEOプランシュさんだ。前出の建設やインフラ領域で、ドローン事業を展開している。
プランシュさんは大学時代に写真や映像の撮影を趣味として始め、そのスキルとドローンを組み合わせて仕事にしたいと考えた。さまざまな市場を調査し、特に不動産やホテル業界でドローン空撮への需要が大きいことを知り、学生時代から個人事業主として活躍した。
実際、同業界でのドローン需要は大きい。インドはホテルやマンションの建設ラッシュで、プランシュさんがドローンと360度カメラを使って撮影する写真や映像は、「高度によって近隣の有名な建造物や景色を部屋から楽しめるかどうか」を事前に調査し、階層ごとの間取りや価格を決める際の判断材料になる。
また、プランシュさんは趣味として、海外からの観光客誘致に貢献するという条件付きで、地方政府からドローン飛行の許可を得て各地で空撮をしている。そんなインドの空を知り尽くした彼に、空から見たインドの美しい景色を4つ紹介してもらった。
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