「iTunes Store」の楽曲ダウンロードサービス廃止が予定されているとの報道は大げさだ。少なくとも、Appleはそのように見ている。
Digital Music Newsは米国時間5月11日、Appleが2年後にも「iTunes Store」の楽曲ダウンロードを終了する計画だと伝えた。「Appleと緊密で活発な取引関係がある」情報筋によると、楽曲ダウンロードの廃止は「するかどうかという話ではなく、いつするかという問題」を焦点に議論されているという。
これに対し、Appleで広報を担当するTom Neumayr氏はあっさり「事実ではない」と述べたとRecodeは伝えている。Neumayr氏は詳しく語らなかったようで、米CNETもAppleにコメントを求めたが得られていない。だが、サブスクリプションベースの音楽ストリーミングサービスがますます支配的な地位を占めていることを考えると、Digital Music Newsの報道が、楽曲のダウンロード購入がどういった役割を果たせるのか、また、今後はどういった役割を果たすのかという問題を提起するきっかけになったことは確かだ。
iTunesは順調に売り上げを生み出しているが、その主な目的は、「iPhone」や「iPad」に加え、これらのデバイスと紐づけられたあらゆるサービスを購入してもらうために、人々をAppleの世界に引き込むことだ。
Appleは今、独自の音楽ストリーミングサービス「Apple Music」に注力しており、こちらもより多くの人々をAppleのエコシステムに呼び込む力を持っている。だが、そのことを考えたとしても、果たしてAppleは楽曲ダウンロードを廃止しようとするだろうか?iTunesの楽曲ダウンロードがまだ数十億ドルもの売上高を生み出しているのであれば、おそらくそうすることはないだろう。
Appleの財務状況をよく知る2人の人物がBloombergの取材に対して語ったところによると、iTunesの楽曲購入による売上高は35億ドル前後で安定しているという。またDigital Music Newsが、Canadian Music Weekの音楽業界アナリストMark Mulligan氏による予測として報じたところによると、iTunesの楽曲ダウンロードは2019年の時点でも、2012年に計上した39億ドルという最高額からは減るものの、売上高が約6億ドルに達するという。
Apple Musicはまだ始まったばかりだ。Appleは、このストリーミングサービスに細かく手を加え、潜在的登録会員に敬遠される要因となっているかもしれない分かりにくさや複雑さをある程度取り除く計画だと報じられている。なおiTunesの楽曲ダウンロード販売は、Apple Musicの約3倍の売り上げをもたらしている。
そのため、Appleが楽曲ダウンロードを廃止するというのは、少なくとも現時点において、愚かな考えと思われる。しかし、今後数年を見た場合、情勢が変化する可能性はあり、音楽ストリーミングサービスが現在よりも大きく収益性のある役割を担うということも起こり得る。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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