KDDI 研究所は3月29日、遠隔で作成したAR画像を、透過型スマートグラス装着者の視線の先に“ぴたり”と表示できるソフトウェア「PITARI(PIctureless Transmissive Augmented Reality Interface)」を、世界で初めて開発したと発表した。今後はトライアルなどを実施しながら、同社の遠隔作業支援システム「VistaFinder Mx」のオプションとして提供する予定。
一般的なスマートグラスを使った遠隔作業支援システムでは、カメラで撮影した写真内にAR画像による指示内容を表示するため、装着者は「ARが表示された対象物の画像」と「実際の対象物」の両方を見比べなければならず不便だった。今回、KDDI 研究所では「簡単な補正作業で物体の奥行きや位置を把握する技術」を開発。遠隔の指示者が作成したAR画像のみを、装着者の視界にすぐさまぴたりと表示できるようにした。
遠隔の指示者が作成したAR画像をすぐに見ることができるため、運用保守のような現場作業だけでなく、地図を使った道案内や、外国での買い物、遠隔での専門作業など、日常のさまざまなシーンでの活用が期待できるとしている。飲食店の看板のメニューなども事前に翻訳データを登録していれば、指定した言語で閲覧できるという。
同社によると、専用のソフトウェアを導入したWindows PCまたはタブレットと、Android OSを搭載したスマートグラスであれば、どの端末でもPITARIを利用できるそうだ。筆者はエプソンのスマートグラス「MOVERIO(モベリオ)」を使用したデモを体験したが、タイムラグはわずか1秒程度で、ストレスなく指示を受けることができた。ただし、同端末でAR画像を閲覧するには視野角が少々狭く感じたので、より最適なスマートグラスの登場に期待したいところだ。
KDDI 研究所ではこれまでに、「てのひらAR」技術や、高速・高精度のマーカーレスAR技術、立体物認識技術、大規模画像検索技術など、さまざまなスマートフォン向け画像認識技術を研究開発しており、KDDIのアプリ「SATCH」にも採用されている。また、スマートグラス向けにAR画像をリアルタイムに表示する技術も開発している。
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