“黄砂”の季節に活躍--世界をカバーする欧州発「大気汚染指数チェックアプリ」 - (page 2)

鳩がロンドンの大気汚染を監視--ウェアラブルデバイスを活用した施策も

 Plume Air Reportを開発したフランス系企業「Plume Labs」は、大気汚染の広がりを制御することを目的に立ち上げられた、テクノロジ系のスタートアップ企業だ。

 経済発展が著しい東南アジアだけでなく、欧州でも数年前から大気汚染が深刻化していることから、北京をしのぐと言われるロンドン市内の大気汚染の状況を改善するために、新たに鳩に汚染状況を監視させる取り組み「Pigeon Air Patrol(ピジョン・エア・パトロール)」を開始した。鳩に汚染計測用のウェアラブルデバイス型センサを背負わせて放ち、市内各地の大気汚染状況を調べてオンライン地図上に表示する仕組みだ。

ウェアラブルデバイス型センサーを背負う鳩(ソース:Pigeon Air Patrolツイッター)
ウェアラブルデバイス型センサーを背負う鳩(ソース:Pigeon Air Patrolツイッター)

 センサを付けた10羽のハトは、現地日付3月15日から3日間、ロンドン市内に放たれた。人の手によって訓練されたレース用のハトであるため、野生のハトよりも高速での飛行が可能。上空30~45mを最高130km/hで飛行しながら大気汚染データを計測した。日が落ちるとハトはハト舎へもどり、翌日に備えて羽を休めるスケジュールだ。このデバイスは鳩が装着して飛べるほど小型で軽く、負担にならないという。同センサで、二酸化窒素(NO2)とオゾン(O3)、揮発性物質(VOC)の濃度を計測できる。

 この鳩による監視サービスは、クラウドファンディングサービス「Crowdfunder」で支援募集中の、汚染データ収集を人間用ウェアラブルデバイスで実行するプロジェクト「Air Patrol(エアーパトロール)」の認知度を向上させる目的もある。ロンドンでは、主にディーゼルエンジンの排気ガスなどに含まれる二酸化窒素濃度が高く、2015年には汚染基準値を1000回もオーバーするなど、市民の健康に影響を及ぼしかねない深刻な状況と化している。

 そのため、市内を移動する多くの人の鞄や自転車、飼い犬のリードなどにセンサを取り付けてもらい、計測したデータをスマートフォン経由で集める。こうしてロンドンのリアルタイム汚染マップを作り、必要に応じてユーザーのスマートフォンに汚染警報を通知する計画だ。Plume Labsは、2016年後半には100人のボランティアを集めてより大規模なデータ収集をしたいと語っている。

 このように、大気汚染対策への本格的な取り組みはまだまだこれからだ。しかし、海外の景色や美味しい食べ物を思う存分楽しむための第一歩として、旅行先候補の最新の大気汚染情報を押さえておくことは大切。日本で報道される情報はあくまでも実情の一部でしかなく、ネガティブな報道ばかりに踊らされて、海外旅行での素晴らしい経験を逃してしまうのは、あまりにももったいない。

 旅行をより楽しく満喫するためにも、PM2.5についての正確な情報を収集し、旅行時期を選んだり、マスクや衣服を準備したりするなどの対策をしっかり行いたいものだ。

(編集協力:岡徳之)

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