米連邦捜査局(FBI)がテロリストの「iPhone 5c」のロックを解除するようAppleに協力を求めていたことはご存じだろう。いや、知らなくても大丈夫だ。
米司法省(DOJ)が米国時間3月21日に発表した声明は、翌22日に予定されていた審理の中止を求めるという予想外の内容だった。DOJは現在、法廷で争うのではなく、入手した謎の技術を使って、Appleの手を借りずにiPhoneの暗号化を解除しようとしている。
FBIは、Appleに手の汚れる仕事をさせようと執拗に迫っていたが、その要求は2月、世間の知るところと突如としてなり、個人のプライバシーと国家安全保障とのバランスという熱く注目度の高い議論へと発展した。両者のにらみ合いが続く中、Appleは、テクノロジ業界全体から支持を得ていたが、米国世論は、どちらの側を支持するかで大きく分かれる結果となっていた。
FBIが隠し持っているとされる技術とは、いったいどんなものなのだろうか。
セキュリティ専門家の間でさまざまな憶測が飛び交っているが、特に際立った理論がいくつか出されている。FBIにとって技術的に困難な課題の1つは、一歩間違えばiPhoneを壊してしまうか、データを消してしまうおそれがあることだ。ソフトウェアの脆弱性を探る企業Carbon BlackのBen Johnson氏によれば、解決には非常に独創的な考え方が必要になるという。
「映画の中で、普通は思いつきそうにない方法を手当たり次第に試して、銀行に押し入ろうとするようなものだ」(Johnson氏)
ハリー・ポッターは、蛇語を話して「秘密の部屋」に入っていった。iPhoneの中をのぞきたいFBIが頼らざるを得ない手段は、そこまで魔法じみたものではないだろう(もっとつまらないものだ)。
これは「NANDミラーリング」と呼ばれる手法で、iPhoneのメモリの一部をコピーする必要がある。現時点では、パスコードの入力を10回間違えると、このiPhone内のデータが完全に消去される。だが、フラッシュメモリをコピーすれば、FBIは何度でもデータを復元できるようになる。
「これなら何度でもやり直しがきく」。米国自由人権協会(ACLU)のテクノロジフェローDaniel Kahn Gillmor氏はこのように書いている。
Gillmor氏がNANDミラーリングについて書いたのは3月に入ってからだったが、このときFBIはまだ、公には、パスワード入力を無制限に試せる新しいバージョンの「iOS」をAppleに開発させようとしていた。今ではGillmor氏の理論がFBIにとって最も確実な選択肢のように思える。単純な「総当たり」式でパスワードを推測するより時間はかかるだろうが、Appleの協力は不要になるだろう。
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