カドカワは3月22日、4月に開校予定の「N高等学校」で活用する双方向教育システムや、生徒同士がインターネットで交流を深めるためのコミュニケーション施策などを発表した。同校の入学式は4月6日に沖縄伊予本校をメイン会場として、インターネットを通じて開催される予定だ。
カドカワ代表取締役社長の川上量生氏は「(生徒の親や社会の理解を得るためには)理念を語るのではなく、結果を示すことが一番大事。私は真剣に、ネットでの学校生活を実現しようと思っている。その片鱗を今日の発表で感じとっていただければ」と語った。
生徒は双方向教育システムの専用アプリをインストールしたスマートフォンやタブレット、PCのブラウザを使って、大学進学対策やプログラミングなどの課外授業を受ける。川上氏によれば、この双方向教育システムは次期ニコ生のシステムであり「ニコ生の最新版が、N高等学校に先に登場する」形になるという。
授業はプロ講師や第一線で活躍するプログラマー、クリエイターによる生放送で、生徒は「ニコニコ生放送(ニコ生)」のようにコメントや質問をしたり、講師が出題したクイズやアンケートに選択式で回答、ボタンをタップして「挙手」をして回答したりできる。
挙手機能では、授業中に講師に指名された生徒が、紙に書いたテキストをスマートフォンのカメラで撮影したり、スマートフォンの画面をキャプチャしたりして講師に送ると、その場で回答を添削してもらえる。元大手予備校講師で、同校のネット課外授業講師に就任した中久喜匠太郎氏は「リアルの授業を超えた機能なのでは。はやく使いたくてワクワクしている」と発表会で話した。
授業のない時間帯は、N高等学校が独自に制作したデジタル教材で学習できる。選択式の問題や受験を見据えた長文読解問題などさまざまなフォーマットがあり、解答時には問題の解説も閲覧できる。学習の進捗(しんちょく)は自動で記録される。
解き方のわからない問題や疑問、悩みごとは、チャット形式のQ&A掲示板で講師や他の生徒に相談できる。
N高等学校では、高校生活において学業だけでなく“友だちづくり”などの交流が必要であるとして、部活動への参加を推奨している。ネットでの部活動を通じて生徒間での交流を促すほか、競技や種目によっては同校の代表として各種大会に出場できるようサポートをするという。
開校当初の部活動は、阿部光瑠氏(六段)を特別顧問に迎えた「将棋部」、藤澤一就氏(八段)を特別顧問に迎えた「囲碁部」、サッカー元日本代表の秋田豊氏を特別顧問に迎えた「サッカー部」、プロゲーマーの輩出も視野に入れる「格闘ゲーム部」の4つ。
すべて「ネット対戦」が活動の基本。サッカー部ではコナミデジタルエンタテインメントが発売しているサッカーゲーム「ウイニングイレブン」シリーズを通じてサッカーの戦術を学ぶ。また、スクーリング時には、リアルの場でのフットサルの直接指導も予定しているという。
ドワンゴ教育事業本部の秋葉大介氏によれば、今後、生徒の要望に応じて部の新設も検討するという。「同好会のようなものが自然発生することも考えられる。一定の要件を満たせば部に昇格できる仕組みも提供していきたい」(同氏)。
“ネットの高校”である同校は、遠足もネットで実施する。スクウェア・エニックスの協力を得て、オンラインRPG「ドラゴンクエストX」のフィールドで、N高等学校生限定アイテムである同校の制服を装備したキャラクターを操作し、引率者である担任の講師とともに遠足に出かける。
有識者を委員に迎えてアドバイザリーボードを設置することも発表。ネットを活用した取り組みについて助言を受けるほか、同校で得たデータ(ログやアンケート、学習習熟度など)を研究用データとして提供し、その分析結果を世間に広く開示するという。
就任予定のボードメンバーは、社会学者で立命館大学の特別招聘教授である上野千鶴子氏、評論家の宇野常寛氏、精神科医で筑波大学 医学医療系 社会精神保健学の教授である斎藤環氏、秋田大学 大学院工学資源学研究科の助教である鈴木翔氏、教育経済学者で慶應義塾大学総合政策学部の准教授である中室牧子氏、社会学者の古市憲寿氏の6人。
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