朝日インタラクティブが2月18日に開催した「Target 2020~テクノロジーがもたらすパラダイムシフト~」をテーマにしたイベント「CNET Japan Live 2016」において、「2016年はVRビジネス元年になる?」と題し、バーチャルリアリティ(VR)をテーマにしたセッションを実施。ジェミニエンタテインメント代表取締役で、エンタテインメントにまつわるトークセッション「黒川塾」を主宰する黒川文雄氏をモデレーターに、VR業界におけるキーマンと言うべき3人のパネリストが、VR界わいの現状や今後の展望を話し合った。
2014年に理化学研究所のベンチャー制度により、簡易VRデバイスによるVRサービス「ハコスコ」を立ち上げたことで知られる藤井直敬氏。現在はハコスコ代表取締役以外にも、VRの認知活動、技術開発、恊働を促すための交流活動を行うVRコンソーシアム代表理事も務める。ハコスコとは段ボールにレンズを付けた簡易ビューワーでスマホを連携して、気軽にVRの世界が体験できるという画期的なものだ。
藤井氏は理化学研究所脳科学総合研究センターで適応知性や社会的脳機能の解明に従事する研究者でもあるが、VR系の開発もその一環で始めるようになったとのこと。しかし、そこで作っていたのは1台数百万もするVRデバイス。これでは一般への普及は難しいと思い、ハコスコのアイディアを思い立ったのだという。ハコスコの販売価格は1台1000~3000円程度と、1台10万円近くするOculus Riftと比べても各段に安い。しかも、ユーザーに無料で配ることもできる、スポンサー型のビジネスモデルも確立している。
「研究者や開発者はどうしてもハイエンドのほうに目が向きがち。実際に楽しむ人たちは必ずしも喜んでお金を払う人ばかりではない。できれば誰でも楽しめるかたちで啓蒙のステージを作らない限り大きなビジネスにはならないと思って、市場を耕している感じ。ハコスコの普及によって、確かに周りのデバイスとかの会社が増えてVR関係が広がったような印象が受ける」と藤井氏。
一方、2015年11月に「GREE VR Studio」を立ち上げたのがグリーだ。パネリストとして登壇した、同社取締役 執行役員の荒木英士氏はその背景や狙いについて次のように語った。
「新しい技術が登場する時、成功するかわからなくても先取りしてやってみる場合と、様子見をしてビジネスになりそうだと判断した段階で買収したりする2通りの流れがある。大企業だと後者は正しいやり方。グリーは今年で10年になるが、SNSに始まり、次にモバイルとやってきて、新しいプラットフォームが出てきた当時はそれが将来潮流になるとは誰も思っていなかった。だからVRもそうなるのではないかと信じて先取りでやっている。ただ、本当は両方やるのがいい。投資でやるにしても自分たちでやっていないと投資先の評価が難しい」
ドワンゴのマルチデバイス開発部 先端演出技術開発セクション セクションマネージャーを務める岩城進之介氏は、2011年に同社に入社後、ニコニコ生放送の開発に携わり、その後ニコファーレのコメント演出システムなどを担当。2015年末のNHK紅白歌合戦で話題となった小林幸子さんの演出の仕掛け人でもある。ニコニコ動画やニコニコ生放送がGear VRで見ることができるアプリ「niconico VR」をはじめ、VRに付加価値を付けていく取り組みを展開している同社だが、VRコンテンツやインターフェースで必要なのは“快適さ”だと話す。
「VRに限らずユーザーにいかに快適なものを提供するか。例えばニコ生で360度VR放送をやるにしてもそれ自体はすぐできる。確かにいろんなところを見ることができるが、果たしてそれがうれしいかというとそうでもない。ステージのライブ映像はカメラが何台かあり、プロのスイッチャーがいて、キレイに見せた映像がやっぱり楽しい。360度の映像の価値は何か?その楽しさと雰囲気を楽しむことを両立する手段は何かと考えるとやはりUI。ニコニコはコメントが特長。そのコメントもVR空間に活かしてより楽しく快適な体験を設計し、それを実現していくところに気を付けている」
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」