CNET Japan Live 2016

幻滅するかもしれないが市場は必ずできる--VR界わいのキーマンが語るVRビジネスの展望 - (page 2)

 モデレーターの黒川氏が取り上げた、トレンドフォースの市場予測では2016年のVR市場は67億ドル、2020年までに700億ドルでおよそ8兆円規模になると予測している。2016年は“VR元年”として注目されているが、VR界わいでビジネスに携わる3人のパネリストはどのように実感しているのだろうか。この問いかけに対して、3人からは意外にもシビアな答えが返ってきた。

ジェミニエンタテインメント代表取締役で黒川塾を主宰する黒川文雄氏がモデレーターを務めた
ジェミニエンタテインメント代表取締役で黒川塾を主宰する黒川文雄氏がモデレーターを務めた

 「自分のやってるビジネスは規模が小さいので正直言ってわからないが、例えばOculusの値段でガッカリしたり、PlayStation VRがいくらぐらいで出るのかまったくわからない(※後の3月16日に、税別で4万4980円と発表)。それがものすごく安く出たら、今少し冷え込んでいるのがまた盛り上がるのは間違いないと思う。これからのリリース次第でいくらでもひっくり返ると思うが、今は本当にわからないというのが正直なところ」(藤井氏)

 「2016年に関して言うと、相当幻滅されると思いますね。私の予想ではOculusが出て、秋ぐらいにはだいたいどれぐらい普及したかがわかってきて、『全然大したことなかった』というふうになるのではないかと。そんなもんだったねと今年はなるかもしれないが、来年、再来年あたりから今後5年ぐらいのスパンで考えると、想像している以上に普及も応用範囲も広がっているのではないかと思う」(荒木氏)

 「VRの市場をどこまで区切るかにもよるが、台数ベースで見るとそこそこ使われるかもしれない。レベルの高い機器も含めてとなると、2016年は台数は市場予測ほどには広がらないかなと思ている。niconico VRもだいたい想定していたとおりの利用者数だったので、今後も緩やか増えていく感じではないか。VRは体験するとおもしろいと皆評価するので、ユーザーの体験が広がるにつれて規模も徐々に広がっていくのかなとイメージしている」(岩城氏)

 また、VR市場を継続的に活性化させるために必要な要素として、「VRを製品として見た場合、一般ユーザーの視点からすると、繰り返し遊べたり、その世界に入って行きたいと思えるものでなければ既存のゲームや映像作品と比べてメリットがなく、むしろ疲れてしまう。刺激はあまりなくてもとにかくその空間を楽しめるような新しい快感を生み出してくれるコンテンツがあるといい。VRの世界観の運営みたいなものも必要かもしれない」と藤井氏。

 荒木氏も次のように続ける。「今後盛り上げていくためのプラスαの要素はやはりコンテンツ。iPhoneやファミコンとかもそうだと思うが、誰か持ってる人がいて、これはすごいと見せてもらって、私も欲しいという追随する状態が生まれないと普及は難しいのかも。そういう意味で言うとやっぱり実際に毎日使われるものをつくっていくのが大事だと思う」

 岩城氏は「率直な話、まずVRのヘッドマウントディスプレーのデバイスって装着するのがめんどう。付けたり外したりという部分の心理的なハードルが高い。niconico VRを最初に設計した時に考えたのも“いかに高いハードルを乗り越えてもらうか”。例えばニコニコを見ていて、ここでツイッターが見たいとかなった時に着けたまますべてを済ませてしまえるようなプラットフォームが整備されたら、きっとみんなが使うようになるのではないか」とさらに本質的な問題を指摘した。

 最後に、3人からはVR業界に対する今後の期待について次のように語られ、セッションが締めくくられた。

 「先行きがわからないところに突っ込んでいく楽しさというのはなかなかない。インターネットが普及した時とか、私も今までの人生で何度かそういうふうに突っ込んでは玉砕してという感じだが、それはそれですごくおもしろかった。VRは今まさにそのフェーズなので、思い切って突っ込んでみるのはいいと思う。マーケットは必ずできるから大丈夫」(藤井)

 「とにかくこれがくるだろうとヤマを賭けて乗らなければ実際に立ちあがらない。インターネットやモバイル出てきた時とで何が違うかというと、今のVR市場プレイヤーにはFacebook、Google、アップル、マイクロソフトなどテックジャイアントがいて、ものすごい額の投資をしているので何も起きないはずがない。そういう意味では既に守りに入っているのではないかというぐらい安全なヤマ賭けだと思っている。今この波に乗らなければ、テック業界で他に乗るところがない」(荒木氏)

 「VRというメディアの世界自体が非常におもしろい。たとえ2016年の普及状況に失意するかもしれなくても、それで見捨てないでこのおもしろい実をちょっと育ててみてほしい」(岩城氏)

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