2月18日に開かれた「CNET Japan Live 2016 Target 2020」では、テクノロジによってもたらされるパラダイムシフトをテーマに、各業界のキーパーソンによる講演やパネルディスカッションなどを実施した。
本稿ではそのうちの1つ、「~2020年には常識 シェアすれば、違う世界が見えてくる~クラウドデータベースによる、顧客情報の全社一括管理」をレポートする。
「2020年も今と同じ働き方でいいですか?」
本セッションに登壇したSansanのSansan事業部 エヴァンジェリストである松尾佳亮氏は、講演冒頭でそう語りかけた。
テクノロジがさらに進化し、東京オリンピックを迎える2020年。果たして自分は今と同じ働き方をしていてよいのか――そう感じている人も多いのではないだろうか。
松尾氏は「働き方を変えれば結果が変わる」と断言する。例として挙げられたのはSansanだ。Sansanでは社員がさまざまな働き方を実践していて、たとえば徳島県の山奥にはサテライトオフィスが存在する。山奥だからといって侮るなかれ。ネット環境は東京よりも優れているとのことで、エンジニアにとっては静かな山奥でリフレッシュしながら、快適なネット環境で仕事ができるというわけだ。
また、営業や商談というと相手の会社に出向いて対面で行うイメージが強いが、Sansanでは社内にオンラインで営業・商談するためのブースが設けられているため、わざわざ出向く必要がないのだという。メリットは移動の時間がかからず効率的に営業活動ができること。1日に10社と商談することも珍しくないという。
こうしたユニークな働き方を生み出す発想の原点は「今ある当たり前をすることではなく、3年後の当たり前に生産性向上のヒントがある」という考え方だ。たとえば現在、渋谷でスマートフォンを持っていても誰も驚かないが、かつてはスマートフォンを持っているとそれだけで話題になる時期があった。便利なものが生まれると、どこかのタイミングで一般化する。それが「3年後の当たり前」である。
一方で、変革に乏しい仕事のツールも存在する。代表的なものが名刺である。なぜ名刺は旧来の使い方から変化しないのか。松尾氏は「名刺が紙である」「個人で管理するもの」という2つを社内でデジタル化とシェアが進まない理由として挙げている。
「名刺は顧客情報と接点情報という2つの価値を持っています。名刺1枚を手に入れるコストは5000~1万円と言われていますが、営業マンは平均して100~200枚の名刺を机に眠らせっぱなしにしています。これを社内でシェアしなければいけません」(松尾氏)。
また、名刺を持っている人というと、営業部や社長を想像するが、松尾氏いわく購買部や人事部などのバックオフィスにも価値のある名刺はたくさん眠っているのだという。これらをどのように洗い出し、ビジネスに役立てていけばいいのだろうか。
松尾氏が提案するのが、自社サービスである「Sansan」を使ったクラウド名刺管理である。
クラウド名刺管理とは、眠ったままになっている名刺、すなわち顧客情報やコンタクト情報をデータベース化し、クラウドに保存しておくというもの。それにより営業組織の生産性向上や案件母数の増加、あるいは社内のコミュニケーション活性化などさまざまなメリットがあるという。
さらにSansanの特徴は、名刺ではなく人物を管理しているという思想によりサービスが設計されていること。たとえば同じ人物が異動したり昇進したりして情報が変わることがあるが、人物中心型で管理するSansanであれば「どの段階の名刺を誰が持っているのか」といったことまでわかるのだ。
Sansan顧客の実例として挙げられたのは、三井物産船舶海洋グループ。営業マンが多くいる同社では、もともと営業のバッティングが多かった。そのため名刺管理は早くから取り組んでいたものの、見込みがないと営業マンが情報を入力しないため、別の人間が気付かずに2度目の訪問をして「前は違う人が来たんだけど」と言われてしまうこともあったという。
こうした事態を防ぐためにも、前述の「人物中心型」で管理する必要があるのだ。
また、丸喜鋼業では社長が交流会に出ることが多かったものの、それが商談になかなかつながらなかった。そこで社長の名刺を営業マンにもシェアするため、Sansanを導入。社長がその場で名刺の裏にメモした情報まで一緒にシェアできたことで、営業マンにとっては便利な情報ツールになったという。
松尾氏によると、通常の名刺管理では一枚の名刺を探すのに平均して4~5分かかるとのことで、ビジネスマンが名刺を整理・管理する時間は1年間で24時間にも及ぶという。すなわち、「24時間×従業員数」の時間が名刺を整理するためだけに使われてしまっているのだ。
クラウド名刺管理サービスでは、探すのも検索すればいいので15秒程度。Sansanなら人物の経歴情報も自動で更新され、さらに相手の会社に関するニュースなどを収集してくれる機能も備えているという。
名刺をシェアし、人脈を共有することで、網羅的なデータベースを構築、即効性のある営業強化ができると松尾氏。
名刺という誰もが使うビジネスツールをより効率的に使うことは、まさに「働き方を変えれば結果が変わる」ことにつながるのだ。
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