2020年を見据えたテクノロジのカンファレンス「CNET Japan Live 2016 Target 2020」が2月18日に開催された。日本でも徐々に広がりつつある、民泊などの資産共有型サービスであるシェアリングエコノミーと、日本ではまだ聞き慣れないオンデマンドエコノミーについて、国内外で事業展開する3社が、その魅力や実情、将来像などを語った。
パネリストは、スペースマーケット代表取締役 CEOの重松大輔氏、ディー・エヌ・エー(DeNA)オートモーティブ事業部 カーシェアリンググループの大見周平氏、米ダフル インク共同創業者 ダフルインターナショナル プレジデントの塚本信二氏の3人。モデレーターはCNET Japan編集記者の藤井涼が務めた。
スペースマーケットが2014年4月に開始した「スペースマーケット」は、”場所”の貸し借りができるサービス。お寺で新年会、古民家で会議、映画館でプレゼン大会など、本来の用途とは異なる使い方もできる場所の貸し出しの仲介をしており、2016年春からは民泊事業にも進出することを発表している。
DeNA オートモーティブ事業部は、個人間のカーシェアリングサービス「Anyca(エニカ)」を運営している。同社が2015年1月から本格的に開始した自動車領域への投資で生まれた部門の1つで、他には神奈川県内で実証実験がスタートしている自動運転のロボットタクシーや、月極・個人駐車場の一時利用をサポートする「akippa」などに投資している。
米ダフルは、頻繁に出張や旅行へ行く人に向けてクラウドクローゼットサービス「DUFL」を提供している。ユーザーは事前にDUFLのクローゼットに服や靴を送り、次の出張や旅行の前に必要なものをアプリで選ぶ。すると、クリーニングされた状態でスーツケースにまとめられた荷物がホテルなどに届けられる。2015年第2四半期に創業し、現在は米国のみで展開しているが、2016年中ごろには日本にもオペレーション窓口を用意する計画だという。
日本ではおそらく利用することに慎重な人が多いと考えられるシェアリングエコノミーサービス。そこには果たしてどんな価値や魅力があるのだろうか。スペースマーケットの重松氏は、利用者側の視点では「いいものが安く手に入るところが大きい」と“お得さ”を強調する。一方の提供する側の視点では、堀江貴文氏の”素人革命”という言葉を引用しつつ、「(貸し出しを)繰り返していくうちに、(提供にあたっての作法などが)上達していく。どうすれば利用者が喜ぶか考えるようになり、いつしか“プロ”になっていく」と、独特のやりがいや魅力があることを訴えた。
Anycaの大見氏も同様に「便利で安い」ことを真っ先に挙げた。「社会を効率化していく」という点もシェアリングエコノミーの役割の1つだとしたが、それはあくまでもスケールした場合だ。初期段階では「人と人とのやりとりはプラットフォーム側で解消しきれない」ため、「“人くささ”が魅力的だと思うお客さんに使ってもらう」など、限られたアーリーアダプター層が利用することに留まることを折り込んでいる。Anycaでは都内を中心に1000台ほどの登録があるものの、やはりこの規模はスケールの前段階だという。
一方、シェアリングエコノミーとは異なる、「オンデマンドエコノミー」と呼ばれるサービスが生まれ始めている。塚本氏によれば、オンデマンドエコノミーは「モバイルアプリ経由で既存サービスをオフラインで提供していく」ものとして定義される。クラウドクローゼットのDUFLは、米国内の空港やホテルなどで、事前に預けたものを受け取ることができるサービスだ。出張の際に大きな荷物になりがちな衣類を常に持ち歩く必要がなくなり、荷造りにかける時間も節約できるというメリットがある。
オンデマンドエコノミー、あるいはシェアリングエコノミーのサービスは、米国内ですでに数多く生まれているが、それと同時に消えていくものも少なくないと塚本氏は話す。「数は多いがロイヤルティの低いものが多い」と指摘し、急成長している分野とはいえ、必ずしも信頼性や事業継続性のあるものばかりではないと注意を促した。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス