スマートフォンを中心に、オムニチャネルやIoTなど次世代テクノロジを通じて生み出されるデジタルマーケティング戦略。そこにはアイデアやクリエイティビティが不可欠だが、それだけでは「これまでになかった体験」を提供することはできない。ユーザーに新たなエクスペリエンスを届けるために、欠かせない普遍性や本質とは何か。
この連載では、デジタルを活用したコミュニケーション施策を発信する「コードアワード」に寄せられた作品から、デジタルマーケティングの「未来」を拓く“ヒント”をお届けする。
ユナイテッドアローズから2014年秋冬シーズンにデビューを飾ったファッションブランド「EN ROUTE(アンルート)」は、表参道、青山、原宿で2014年9月6日に開催された「Fashion’s Night Out」に合わせ、キャンペーン「EN ROUTE: THE SNAP UP」を実施した。
世界的ファッションマガジン「VOGUE」が主催するイベント「Fashion’s Night Out」は、エリア内にある参加ショップが各々イベントを打ち出し、来場者の熱気と共にファッション業界を盛り上げるイベントして定着しているが、本施策は限られた空間で、ごく少数のセレブリティだけを招いて行われる既存の型を破り、クラウドソーシングによる革新的なファッションショーを開催した。
事前に専用のiPhoneアプリをダウンロードした1000人のユーザーを、一夜限りで「スマフォトグラマー」と称して雇用。2014年秋冬コレクションをまとって街を歩くモデルを撮影すると、ブランド側がリアルタイムで審査して、写真1枚につき1000円で購入する仕組みだ。
その報酬は、街に点在する「キャッシャーマン」から現金として受け取ることができるが、これは「“ファッション”と“労働”の新しい関係性」という、ブランドが提案する「新しい価値観」の一つを具現化している。また、ブランドは「モードファッションとスポーツの共存」や「身体性」を哲学としているが、ユーザー自身がアクティブに動き、ファッションを撮影する本施策そのものも、ブランドのフィロソフィーを体現している。
ユーザー=スマフォトグラマーに向け、さまざまな撮影ミッションが与えられたことで、多彩なバリエーションの写真が撮影・公開された。その結果、実際に撮影された写真の総数は2万7992枚、そのうちブランド側が買い上げた枚数が1997枚。SNSがコミュニケーションの根幹となる中、「EN ROUTE」というブランドを強烈に表現するビジュアルが、リアルタイムで世界中に発信・拡散された。
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