スマートフォンを中心に、オムニチャネルやIoTなど次世代テクノロジを通じて生み出されるデジタルマーケティング戦略。そこにはアイデアやクリエイティビティが不可欠だが、それだけでは「これまでになかった体験」を提供することはできない。ユーザーに新たなエクスペリエンスを届けるために、欠かせない普遍性や本質とは何か。
この連載では、デジタルを活用したコミュニケーション施策を発信する「コードアワード」に寄せられた作品から、デジタルマーケティングの「未来」を拓く“ヒント”をお届けする。トミーヒルフィガーの2014年秋のコレクション「TECH TRADITION」のコンセプトは「伝統的であること、現代的であること」。この相反する2つの要素を融合して「トミーヒルフィガー 表参道店 バーチャル来店 キャンペーン」として具現化させた。
旗艦店である表参道店に、シリコンバレーのベンチャー企業が開発したテレプレゼンスロボット「Double」を設置した。このロボットを遠方にいるコンシューマーがインターネット経由で操作することで、あたかも自分の分身が、リアルなショッピングを楽しんでいるような体験ができる仕組みだ。
このバーチャル体験をより多くのコンシューマーに味わってもらうべく、店内の様子が見られる「Googleインドアビュー」も活用。ロボット操作においても、Googleインドアビューにおいても、店内をくまなく見て回らなければ答えが分からないクイズを実施した。
施策に使用されたDoubleは、人間ほどの背丈と自由に走行できるタイヤを持ち、ちょうど人間の目線の高さにiPadが設置されている。インターネットに接続し、テレビチャットの状態で操作することで、“歩行しながら見る”という、ショッピングの基本動作が実現できる。さらにテレビチャットの特性を生かし、スタッフに声を掛けて、気になるアイテムをより近くで見ることも可能とした。
最新テクノロジの真新しさから話題を集めただけでなく、テレビチャットを通じてスタッフとの会話も可能にした。これにより、スタッフに受け継がれる、伝統を重んじるブランドの精神も伝えることに成功し、本施策のコンセプトである「TECH TRADITION」=「伝統的であること、現代的であること」を可視化させた。また、ブラウザを閲覧するだけのEコマースの現状に、よりリアルなバーチャルショッピングの未来を打ち出した施策とも言えよう。
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