「スマホしか持っていない」が高じて、「スマホ以外触らない」という10代が増えてきた。高校生や大学生には、「フォルダ」「クリック」「ドラッグアンドドロップ」などは知らない、分からないという人は多い。
「10代だけでなく、新入社員も同じようなもの」という話を聞いた。ある会社では、新入社員のほぼ全員がPCが使えないため、最初の1週間はキーボード練習やPCの使い方講習に明け暮れたという。IT関連部門の新入社員も例外ではない。「現在のスキルではなく将来のポテンシャルを見込んで採用した」と人事採用担当者は言う。
ジャストシステムの「モバイル&ソーシャルメディア月次定点観測(総集編)」(2015年2月)によると、15~19歳における12月の主要メディアの平均接触時間は、「スマートフォンからのインターネット接続」が135.3分でトップ。「PCからのインターネット接続」(104.1分)、「テレビ」(101.8分)を抜いている。この年代は、1年を通じて「スマートフォンからのインターネット接続」が一番多いという結果になった。10代においては、完全にスマートフォンが主要メディアとなっているのだ。
スマホしか利用しないことで、どのような影響があるのだろうか。問題は起きないのだろうか。
高校生における動画視聴の方法は大きく変化している。テレビ好きという層もいる一方で、動画サイトしか見ない層が増えているのだ。
高校2年男子A之は、自他共に認めるテレビ好き。しかし、視聴の仕方はネット経由の方が圧倒的に多い。「深夜番組とかリアルで見られない番組は動画サイトで見る。録画すると家族にばれるので、後で動画サイトで1人で楽しんでいる。ネットで探せば絶対に落ちているので、基本録画はしない」。ただし、高画質にはこだわりがあり、好きなタレントの出る番組は極力テレビで見たり、YouTubeでもURLの終わりに文字列を付けて見るようにしているそうだ。
高校1年男子B夫は、「動画は絶対にネットが一番」と公言してはばからない。見ているのはテレビ番組が中心だが、テレビではなくコメント付きで動画サイトで楽しみたいという。「ニコニコ動画のコメントなら動画の見所が分かる。1人では見ない番組も、みんなと一緒に盛り上がると楽しめる」。もちろん自分でコメントを書くこともあり、反応があると嬉しいそうだ。さらに、「YouTubeも、コメント欄で他の動画などの情報を得たり、意見交換などもできる」と、“共有”に強い喜びを感じている。
B夫は、テレビ番組の他に、ゲームの実況動画やVOCALOIDの動画も好む。ゲームの実況中継は、裏技や攻略テクニックを学ぶのに使っており、ゲームを購入するかどうか決める際にもチェックするという。
動画サイトを見る層には、A之のように「好きな時に1人で自由に見られるから」というパーソナルメディアとして利用する層だけでなく、B夫のようにネット文化を楽しんだり、共有することで新しい楽しみを得ている層もいるのだ。
シニア世代は慣れ親しんだPCサイトを好む傾向にあり、スマホで見る場合でも、スマホサイトではなくPC版に切り替えて利用することが多いという。ボタンなどがどこにあるか分かっているPCサイトの方が使いやすいというわけだ。高校生ではこの逆のことが行われている。
高校2年女子C美はスマホのヘビーユーザー。テレビを見ている時も友だちと話す時もスマホを手放さず、LINEやTwitterを利用する。ある人気のモデルプロデュースのファッショングッズを探していたC美は、やっとのことでまだ売っているショップを見つけた。
ところが、そのショップはPCサイトのみでスマホ対応しておらず、買い方が分からなかった。仕方なく社会人の姉が帰宅するのを待って、代わりに購入手続きを取ってもらったそうだ。「スマホサイト以外で買い物とか無理。PCサイトって初めて見たけれど情報が多すぎてうざい」。確かにスマホでPCサイトを表示すると見づらくなるが、家にある共用のPCで表示させて買うこともできたはずだ。ところがC美はそもそもPCもPCサイトも利用できなかった。
スマホサイトは情報量や機能を減らす分、使いやすくなっているものだ。一方のPC向けECサイトは、商品を比較検討しやすかったり、大きい画像が見られるなどのメリットがある。しかしC美にとっては、情報量が多いことがデメリットに感じられてしまい、PCサイトは使いこなせないのだ。
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