NTTドコモは3月2日、ネットワーク戦略に関する説明会を開催した。理論値で下り最大375Mbpsを実現する通信サービスや、3.5GHz帯を用いた下り最大370Mbpsの通信速度を実現するサービスを6月より提供することを発表したほか、東日本大震災からおよそ5年を迎えたことを受け、災害に備えた新たな取り組みについて説明した。
NTTドコモの取締役常務執行役員である大松澤清博氏は、2015年3月より提供を開始したLTE-Advancedを用いた高速通信サービス「PREMIUM 4G」の取り組みについて振り返った。同氏によると、複数の周波数帯を束ね合わせて高速化を実現する「キャリアアグリゲーション」(CA)の導入によって、山手線の駅など利用者が集中するエリアで、8倍もの高速化を実現するなど、快適さの向上に大きな効果を発揮したという。
PREMIUM 4Gの対応基地局は、この1年で900都市以上、基地局数で2万を超えるなど順調に拡大しているが、6月からは新たな高速化に向けた施策を導入するとしている。1つ目の施策が、国内最速の通信速度を一層強化することだ。
具体的には、現在3GとLTEで併用している800MHz帯を、一部地域からすべてLTE用に割り当てる“フルLTE”化を進めるとのこと。現在は2GHz帯、1.5GHz帯、800MHz帯と3つの周波数帯をCAで束ねることで、理論値で下り最大300Mbpsを実現している。これを、800MHz帯のフルLTE化により、2GHz帯、1.7GHz帯、そして800MHz帯の組み合わせで、下り最大375Mbpsの通信速度を実現するという。
もっとも800MHz帯は、特に地方において、3Gのエリアを広範囲にカバーする上で用いられている帯域でもある。そのため、800MHz帯の基地局をすべてフルLTE化するのではなく、利用者が多い都市部を中心に、トラフィック状況を確認しながら徐々にフルLTE化を進めていく方針のようだ。
もう1つの施策は、新たな周波数帯域である3.5GHz帯の活用だ。2014年12月に割り当てが決まった3.5GHz帯は、40MHz幅と帯域幅が広いことに加えて、3Gなど他の用途に使用していないことから、すべての帯域をLTE用に割り当てることができる。大松澤氏は、「今回の方策は新しい道路を作るようなもの。混雑を解消し、快適な品質の通信を提供する上で効果が大きい」と、3.5GHz帯の活用によるトラフィックの解消に強い期待を寄せた。
3.5GHz帯では、従来のLTEで一般的な、上りと下りの帯域を2分割するFDD(周波数分割複信)方式ではなく、周波数帯の利用時間を分割することで上りと下りを切り替えるTDD(時分割複信)方式を採用している。そのため、同じく3.5GHz帯を獲得した他社と同期の調整が必要になるなどの手間は発生するが、上りと下りの分配を変えられるメリットがあるとしている。
ドコモではこの3.5GHz帯の基地局を、利用者が集中する都市部にアドオンセルとして展開。他のFDD方式を用いた帯域とCAすることを前提に活用するという。都市部に重点的に展開することで、投資効率を抑えながらも効果的なトラフィック対処ができると説明する。またドコモは、3.5GHz帯を可能な限り下りの通信速度増強に活用し、上りにはFDD方式の帯域を活用する方針のようだ。最も高速な組み合わせとなる1.7GHz帯とのCAでは、理論値で下り最大370Mbps、上り最大50Mbpsを実現できるとしている。
さらに大松澤氏は、「今後もPREMIUM 4Gは進化させていく」と話す。次のステップとしては、アンテナを活用した高速化技術「MIMO」の高度化によって、理論値で下り最大500Mbps超を目指しつつ、5Gの早期導入へとつなげたいとしている。
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