江幡氏 : スタートアップ自体の事業テリトリーの変化を見て、ICTで支援しやすいところだけでなく、飲食や流通、不動産など、スタートアップの領域が広がっていることを感じていました。そうした事業に対応するには、直接その事業を理解している人が参加しないと環境が変わらないと感じたというのが、パートナー連合プログラムを始めたきっかけですね。
塩野氏 : 実は多くの大企業が新規事業を求めていて、インキュベーターだらけになっているという現状もあります。
江幡氏 : そのためか、思いのほか積極的に関わってくれる企業が多いですね。各企業には採択したチームに最低1名ずつ、週に1度、半日くらいメンターとして参加してほしいと伝えているのですが、実態としては丸1日関わることが多いですし、土日も関わってくれるケースも出てきています。想像以上に熱心に参加してもらっています。
塩野氏 : KDDI∞Laboには、第8期までに39チームの卒業生がいるのですが、卒業生同士が横につながるだけでなく、パートナー連合プログラムに参加した大企業との縦のつながりが生まれているというのも、大きな資産となっているように思います。
江幡氏 : 第5期までは、アイデアを形にして実際のビジネスを確立させたいという考えから、広いステージのスタートアップを採用していました。ゼロから始めるチームや、VCから資金調達の経験があるチームが混在していたことから、経験のある“兄貴分”のチームや人物が全体の面倒を見ることも多かった。
ですが第6期からはゼロからのアイデアベースへと、採択ステージを変えています。そのため、最近ではハッカソン上がりのチームが入ってくるなど傾向も変わってきています。また各チームのステージが近く、横並びでスタートすることから、チーム間の競争も加速しているように感じます。
塩野氏 : 全員大学生で、メンターとなったKDDIの社員宅で合宿し、寝食をともにしながら制作を進めるチームなどもありましたね。卒業後に就職か起業か悩んで、相談に乗ったこともあります。また、すでに起業しているチームの場合は、受託開発をいつ止めるべきかという悩みの相談を受けることが多いですね。
江幡氏 : 第2期のエウレカもそうでした。応募してきた時はITベンチャーの受託などをやっており、業界動向をよく学んでいましたが、自分たちでサービスを立ち上げたことがなく、応募時はそのチャレンジから始めています。エウレカは後に「Pairs」「Couples」などで成功を収め、バイアウトを実現しましたが、自ら立ち上げを判断して成長させるところを支えられたのは大きかったと感じています。
塩野氏 : 一方で、少数ですが受託をメインにしている企業もあります。第1期のガラパゴスなどがそうで、技術力を生かしてB2Bのソリューションを展開しながら、個別の受託開発などで成長しています。
江幡氏 : プログラム活動期間中、部長クラスに成果を発表する場を設けていますし、Demo Dayには幹部や専務などが直接顔を出して見ています。上のレイヤーにこんな事業を作っているということを知ってもらえるのは大きいですね。
またメンターとして関わった若い人も、新しいもの作る力や経営的な判断の経験を積むことができます。自分の発言がチーム全体に大きな影響を及ぼすため、中途半端なことは言えませんから。そうした経験をした30代の中堅社員が増えていることに非常に価値があると思っています。塩野氏 : 私は大企業と話をしたり、事業開発の手伝いをすることが多いのですが、大企業は事業開発などしたことがない人たちが多い。そうした企業の社員が、パートナー連合プログラムによって新しいビジネスを生み出そうと死ぬ気で取り組む人たちに触れ、成功するのを見る経験は稀有なこと。KDDI∞Laboを通じて、ビジネスを作り出すことをより身近に感じられることが大きいのではないかと思います。
KDDI∞Laboはスタートアップと大企業の触媒になっていると思いますし、そこから大企業も出資などに動き始めています。いま懸念しているのは、起業する人が不足しているということですね。大企業の受け入れ体制は整っていて、実際に手助けもしているので、起業家はもっと増えてほしいし、貪欲であっていいと思います。CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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