タイでは、「国内で最も影響力があるブランド」にFacebookが選ばれたり、Instagramで人気の世界の観光地第4位にバンコクのショッピングセンターが選ばれたりするなどSNSが大人気。日本発のLINEも高い人気を誇っており、SNSが生活を支えるインフラといっても過言ではないほどだ。
タイ人のSNS好きの背景については諸説ある。一昔前、インターネットが普及していない後進国であった頃の「有名になれるのは選ばれた人のみ」という考え方に対する反動からくる強い自己顕著欲。いまとなっては経済的自由を謳歌できている自分の姿をさらし、他人とは違うところを見せたい、自慢したいという心境など。「どうしたらもっとかっこよくなれるか」と貪欲で、SNS上のお手本から学ぼうと積極的だ。
このお手本から学ぶ姿勢は、ほかの国と比べてもタイが特に顕著かもしれない。親やお寺、先生の言う通りに生きるのが美徳だったころの名残であり、それはいまでも多くの人びとの心に残っている。お手本に学び、自己顕示欲を満たすライフスタイルをしてみたい。SNSとタイ人の気質は相性がよいのだ。
タイに進出する日系企業としては、SNSを使って消費者とのコミュニケーションを促進し、成長につなげたいはずだ。しかし、いわずもがな、手あたり次第にコメントや写真を投稿しても効果は出ない。ときには裏目に出てしまうのは日本もタイも同じである。
タイ人の特性をプロモーション活動にうまく生かしているのが、訪日タイ人向けにSIMカードを販売しているXQUEST。同社はInstagramで人気のあるタイ人のインフルエンサーに協力を仰ぎ、自社ブランドを宣伝している。
たとえばこちらは、フォロワー数なんと200万人のネットアイドル Thanidaさん(22歳)。XQUEST発刊の無料日本旅行ガイドブック「SUGOI SIM MAGAZINE」を持っている写真を投稿したところ、1万9000件ものいいねがついた。Thanidaさんは日本の大学を卒業しており日本語も堪能だという。
もう1人。こちらは、先ほどのThanidaさんを上回るフォロワー数280万人の女優 Chotikaさん(31歳)。Thanidaさんと同じく投稿したところ、こちらも1万9000件ものいいねがついた。
最後は、フォロワー数130万人の大学生で女優のWirapornさん(21歳)。同じく投稿したところ、こちらは2万3000件以上のいいねがついた。
タイのネットインフルエンサーには、テレビ番組や映画に出演するようないわゆるセレブリティだけでなく、一般人に近い人やネットアイドルと呼ばれるような人たちもいる。より身近で、追いかけるのに自分の身の丈にあっていると感じられる人を支持するのはとてもタイ人らしい。
XQUESTは、タイ国籍者向けの短期の訪日ビザが免除された直後に、このキャンペーンを展開。それも奏功してか、Instagramでは「日本で使えるSIMなら知りたい」など反響があったそうだ。インフルエンサーに協力を仰ぐプロセスや価格感について、同社の陽田社長は「現地の流行に敏感な20代の女性をターゲットに独自調査して、1人ひとりと交渉を重ねた。起用にかかる価格はその人の影響力の度合いによって変動する」と語る。
XQUESTはInstagram以外にもユーザーの囲い込みに力を入れている。同社のSIMカードは、ユーザーが専用のアプリをインストールしなければ購入できない。そうすることで、日本を訪れたことのある日本好きのタイ人のデータベースを構築しているのだ。このデータベースをタイに進出する他の日系企業に対してマーケティングソリューションとして提供する計画があるという。
「どのようにタイのインフルエンサーたちに接触したらよいかわからない日本企業にその場を提供し、より効率的なマーケティングを展開する土台としてほしい」(陽田氏)とのことだ。
(編集協力:岡徳之)
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