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クラウドソーシングの労働力を核とした新事業続々--うるる 星社長インタビュー

井指啓吾 (編集部)2016年01月27日 08時00分
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 インターネットを通じて仕事の受発注ができる「クラウドソーシング」。これを活用した事業を手がけ、成果を挙げている企業の1つが、「在宅ワークのスタンダード化」をビジョンに掲げるうるるだ。同社は主婦向けのクラウドソーシングサービス「シュフティ」を運営するとともに、その登録ワーカーの労働リソースを活用して、複数の事業を展開している。

主婦向けクラウドソーシングサービス「シュフティ」PC版トップページ
主婦向けクラウドソーシングサービス「シュフティ」PC版トップページ

 具体的には、たとえば入札情報速報サービス「NJSS(エヌジェス)」の場合、中央省庁や外郭団体、都道府県庁、市区町村役所などが各組織のウェブサイトに掲載した入札情報を、うるるがシュフティで依頼した在宅ワーカー数百人が目視で確認し、NJSSのデータベースに入力している。後発かつ高価格のサービスながら、クローリングによる機械的な情報収集ではない“人力による正確さ”が支持され、同社代表取締役の星知也氏によれば、業界シェアの7割近くを握っているという。

 うるるは、クラウドソーシングの労働リソースを活用した事業やサービスを「CGS(Crowd Generated Service)」と呼ぶ。2015年4月には、同じくCGSを手がける企業とともにCGS協会を設立。現在、うるるを理事として、ウィルゲート、BearTail、Caster、MUGENUP、クオリアの6社が名を連ねている。同協会では、CGSの市場定義や、CGSを支えるクラウドソーシングのワーカーの仕事が“値崩れ”しないような仕組みについて議論しているという。

 CGSの利点、うるるでのCGSの事例について、星氏に聞いた。なお本稿で説明するCGSのより具体的な取り組みについては、2月18日のイベント「CNET Japan Live:Target 2020~テクノロジーがもたらすパラダイムシフト~」で、星氏やインキュベイトファンドのGeneral Partnerである本間真彦氏らが説明する予定だ。

うるる代表取締役の星知也氏
うるる代表取締役の星知也氏

--うるるが手がけるCGSについて教えてください。また、CGSを始めるに至った経緯は。

 CGSは、クラウドソーシングサービスに登録しているワーカーの労働リソースを活用して取り組むサービスや事業を指します。そして我々は、自らクラウドソーシングサービスを運営しながら、そのCGSを複数展開している会社です。

 我々の代表的なCGSには、NJSS、保育園や幼稚園の写真展示・販売サービス「園ナビフォト」、手書きに対応したタブレットフォームシステム「KAMIMAGE(カミメージ)」、空き家情報データベース「空き家活用ポータル」などがあります。ターゲットとする業種や職種はそれぞれ異なりますが、その裏側で、シュフティの在宅ワーカーの労働リソースを活用しているところは共通しています。

 現在、技術革新が進んでいて、なかでもAIが発達することで、一部の仕事に「人」がいらなくなると言われています。たとえば、テキスト入力に関してはOCR技術があり、音声に関しても、自動的にテキストに変換されたり、翻訳されたりする技術が発達してきています。

 技術革新が進めば進むほど、今まで世の中になかったイノべーティブなサービスが出てくるはず。それにより、従来よりも極端に短時間、低コストでサービスを立ち上げることが可能になるはずです。しかし、その反面、そういった状況になればなるほど「人力」が見直されるのではないか、と我々は仮説を立てました。その考えから、我々はいま次々に新たなCGSを作っています。

入札情報サービス「NJSS」PC版トップページ
入札情報サービス「NJSS」PC版トップページ

 我々が提供しているNJSSは、全国の自治体のウェブサイトに掲載される入札関連情報を在宅ワーカーが収集して、NJSSで一括検索できるようにしたサービスです。我々がNJSSを作ろうと思った時には、すでに5~6社が同様のサービスを提供しており、どこもウェブサイトをクローリングして機械的に情報を収集していました。そうした方が手間もかからず、コストもかからないので、当たり前ですよね。

 しかし、機械的な収集であるため、必要な情報が抜け落ちることも多くあります。そのため、我々は人力で情報を集めようと考えました。約6000件ある全国の自治体のウェブサイトを目視でチェックしてもらい、新しい情報があれば手動でデータベースに登録してもらう。そうすることによって、情報の抜け漏れが極端に少なくなりました。また、人力がゆえに、弊社ならではの付加価値として「落札情報」なども収集、登録してもらっています。

 情報の網羅性や正確さはもちろん、付加価値の高い情報を人の目の判断して収集することによって、後発のサービスながら、自社調べではすでに6~7割のシェアをとれている状況です。これは「人力が機械化を逆転した事例」の1つといえるでしょう。クラウドソーシングによって人力を活用することで、今までにない価値を持ったサービスが作れるのがCGSの神髄です。

--企業が新たにCGSに取り組む際の利点とは。また、プラットフォームによって違いはありますか。

 CGSであれば、事業を始めるにあたって人員を大量に採用する必要がありません。従来の労働力(正社員や契約社員、派遣社員、アルバイトなど)を活用するとなると、たとえばNJSSの場合には、数百人分のアルバイトを採用する必要があり、その採用活動、席やPCの用意、労務管理などで負担がとても大きくなります。これが大きな利点です。

 特に、スタートアップにとってCGSは取り組みやすいものだと思います。たとえ地方に住んでいても、インターネットに接続したPCが1台あれば、さまざまなサービスを実現できる可能性があります。その裏側に、クラウドソーシングの労働リソース――シュフティの在宅ワーカーは約27万人――があるため、それを活用して事業を始められます。

 クラウドソーシングのプラットフォームにはそれぞれ特徴がありますが、大手と呼ばれる各社は、シュフティとは根本的な構造や思想が違うように感じます。他社はデザインや開発、制作などに強いワーカーが多いですが、シュフティはデータ収集や入力などの事務作業に強いワーカーが多い。そのため、「サービスの裏側で雑多な業務が必要なCGS」を我々は非常に得意としています。

 具体的には、たとえば「アイコンを大量に作れるCGS」は我々はあまり得意ではない。一方で、NJSSのような「裏側で大量にデータの収集や入力が必要なCGS」には、うまく対応できるのです。

--クラウドソーシングサービスの普及には、まだ時間がかかりそうです。

 「在宅ワーク」という働き方がスタンダードになることによって、3兆円の市場ができると我々は試算しています。「派遣(一般労働派遣+特定労働派遣)」の市場規模は、2013年度で約5兆円で、ピーク時には8兆円ほどでした。そういった規模と比較しても、少なくとも3兆円にはなるだろうと見ています。

 「派遣」という働き方ができてから、市場がピークに至るまで、実は約30年かかっています。今は時代が違うので、そこまで時間は掛からないと思いますが、クラウドソーシングが日本で認知されるようになってから、まだ2~3年しか経っていません。これからまだ10~20年はかかると思うので、その間、我々はただクラウドソーシングに投資し続けるのではなくて、それを活用した事業を作っていきます。

 我々がCGSの事例を作ることで、新規事業を模索する企業や、これから生まれてくるスタートアップの皆さんたちに、ビジネスのヒントを与えられればと思っています。

2月18日に開催するイベント「CNET Japan Live:Target 2020~テクノロジーがもたらすパラダイムシフト~」において、うるるは「クラウドソーシングから生まれた「CGS」で変貌するビジネス流儀」と題してCGSに関するさらに具体的な取り組みについて講演するとともに、展示ブースとそのミニセッションスペースでも事例を説明します。

講演にはうるるの代表取締役である星知也氏と、インキュベイトファンドのGeneral Partnerである本間真彦氏が登壇。ミニセッションには両氏に加え、CGS協会に加盟しているBearTailの代表取締役である黒﨑賢一氏、クオリアの代表取締役である勝城嗣順氏が登壇します。

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