オランダのTomTom International BV.は、音楽プレイヤーや心拍計を内蔵したGPSスポーツウォッチ「TomTom SPARK」と、GPSアクションカメラ「TomTom Bandit」を3月中旬に発売し、日本のウェアラブル端末市場に参入する。
フィットネス活動量計の分野ではFitBitやJawbone、アクションカメラの分野ではソニーやパナソニック、そしてGoProといった企業がすでに日本市場でシェアを獲得しており、TomTomは後発といえる。どのような差別化を武器に日本市場に参入するのだろうか。
TomTomは、1991年にオランダのアムステルダムで創業。自動車向けGPSナビゲーションユニットの開発・販売で、欧州市場においてシェアを獲得している。2008年からは日本でもBtoB事業を展開。最近ではグローバルで研究開発が進む自動運転分野にも進出し、フォルクスワーゲンとパートナーシップを締結しているという。コンシューマ向けウェアラブル端末は2013年から展開し、2016年に初めて2製品を日本市場に投入する。
TomTom SPARKは、ランニングや水泳、ウォーキングなどフィットネスでの利用を想定して開発されたGPSスポーツウォッチで、活動量の計測、GPSによる移動距離・経路や速度のトラッキング、リアルタイム心拍数管理などが可能。さらに、3Gバイトのストレージを内蔵した音楽プレイヤー機能を備えており、Bluetoothヘッドフォンを使用することで、スマートフォンや音楽プレイヤーを携帯しなくても、ワイヤレスで音楽を聴きながらワークアウトできるという。
一方のTomTom Banditは、最大4Kの高解像度撮影に対応したアクションカメラで、スポーツやサイクリングでの利用を想定している。スローモーション撮影、インターバル撮影(タイムラプス)に対応しているほか、1秒あたり10枚の静止画連写撮影機能を備える。また、Wi-Fiで相互接続することで専用アプリをインストールしたスマートフォンをライブビューファインダーとして使用できる。
TomTomの共同創業者で、コンシューマ部門のマーケティング責任者を務めるコリーン・ヴィグリュー氏に、これらの製品と日本での戦略について聞いた。
私たちは自動車向けナビゲーション技術で事業を展開している企業です。欧米においてはパーソナル・ナビゲーションを誰でも手軽に活用できるようにする“技術の民主化”を実現してきましたが、自動車向け技術では日本においてもこれまで事業を展開しています。その中で、ウェアラブルデバイスやアクションカメラといったコンシューマ製品においては、今こそが日本市場に参入する良い時期だと判断しました。
日本は人口が多く、その規模はフランスとドイツの人口を合わせたほど。そして製品のターゲットであるランニング愛好者やアウトドアアクティビティの愛好者の人口も多い。マーケットの潜在性は大きいのではないかと考えています。日本ではすでにオフィスもあり、自動車向け製品を日本のBtoB市場で展開してきた知見もあります。コンシューマに向けても、適切な製品を投入することでブランドを構築できるのではないかと思っています。
私たちは世界中のどこでも同じ競合他社と戦っています。その中で求められるのは、ユーザーの課題・問題を解決するイノベーティブな製品を提供するということです。技術はユーザーの問題を解決するためになければならず、“技術のための技術”になってはならないのです。
たとえば、TomTomは世界で初めてスポーツウォッチに心拍計を内蔵しました。これにより、胸に心拍計測用のベルトを着ける必要がなくなりました。今では一般的になってきていますが、実はTomTomが世界初なのです。
また、TomTom SPARKは、3Gバイトのストレージを内蔵した音楽プレイヤーです。腕時計を着けるだけでワイヤレスミュージックを楽しめるようにすることで、スマートフォンなど邪魔な物を持って走る手間が省けました。GPSの精度やスピードも、カーナビゲーションで培った高度な技術をフィードバックしています。製品はすでに欧州のいくつかの国のGPSスポーツウォッチ市場でシェア1位を獲得しており、デザイン面でも、機能面でも、日本市場で成功できるという自信があります。
一方、アクションカメラについては、ユーザーの中に“せっかく長時間撮影しても、それを共有することがない”という課題がありました。カメラをPCにつないでデータを転送して、編集ソフトを使って編集してという作業を中々やりたがらないのです。しかし、TomTom Banditは、この手間をかけずに撮影した動画を簡単に共有できる方法を考えました。
具体的には、撮影中にカメラに内蔵されたさまざまなセンサが得た情報を、自動的にタグとして動画に記録し、撮影中のエキサイティングな場面を後から高品質なハイライト動画としてアウトプットする機能を搭載しました。
スマートフォンをWi-Fiでカメラとつなぐことで、専用アプリからハイライト動画の閲覧や簡単な編集、SNSでの共有などができ、ケーブルでPCにつなぐ必要はありません。カメラがメディアサーバのような機能を果たすのです。SNSへのアップロードは、スキー場のような場所でもモバイルネットワークがあればすぐにできます。欧州のユーザーからの反応は非常に良い機能です。
そう、撮っても後から見ないのです。カメラにおいて重要なのは、撮ること以上にそのあとに共有するということ。フランスのあるスキー場では、スキー教室のインストラクターが、撮影した動画をスマートフォンですぐに生徒に見せて、指導するといった活用もされているようです。リフトに乗っている間にハイライト動画の生成・編集ができるので、手間や時間はかかりません。
そうですね。テクノロジは人間を自由にするためにあると思うのです。製品はユーザーにとってより直感的に使いこなせるものでなくてはならない。そのための機能やデザインにこだわっています。どんなに複雑になってもいいからと言って、機能を満載することは誰にでもできる。ユーザーにとって必要な価値だけをシンプルに実現し、使いやすいデザインに落とし込み、それを適切な価格で提供することは、非常にチャレンジングなのです。
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