1年を振り返ってみると、Appleにとって2015年も非常に実りある1年だったと言えるだろう。スマートフォンを核とした事業戦略の黄金期を迎え、世界的にはスマートフォンの成長鈍化、あるいは減少に転じる地域がある中で、成熟市場でも成長できるブランドと製品力の強さを見せつけた。
本稿では、5つのテーマから振り返っていこう。
毎年、iPhoneは減少に転じるという予測を立てるアナリストや投資家は存在するが、そうした予想をはねのけ続けているのがAppleだ。Appleは2015年9月までの1年間に、2億3122万台のiPhoneを販売し、過去最高の成長を遂げた。
2014年10月から2015年9月の数字だったことから、2014年の新製品、iPhone 6/6 Plusの販売が好調だったことを示している。4インチサイズから4.7インチ、5.5インチの大型ディスプレイへと拡大させ、iPhone購入の障害を一挙に取り去った。ただ、これだけの増加の要因は市場の拡大にある。
また、iPhone 6シリーズ以降、新たな市場として中国での販売強化に取り組んだ結果が、過去最大の増加の要因になったと考えている。iPhone 6s/6s Plusは、世界同時発売のタイミングから中国市場に投入しており、Appleにとって「大切な市場」であることを示した。
iPhoneのスペックとしては、ハイエンドAndroidスマートフォンへのキャッチアップが続いている。2014年モデルの画面サイズ拡大に続き、カメラの1200万画素化や4Kビデオ撮影への対応、メモリ2GBの搭載などが、そのトピックとなった。しかしAppleらしい進化として、感圧タッチパネル3DTouchの搭載や、写真に短い動画をつけるLive Photosなど、新しいスマートフォンの進化も加えていた。
iPadは2015年もマイナス成長から変化を見出すことはできなかった。2年の買い換えサイクルが存在するiPhoneと異なること、またメディア視聴やアプリを使い続けていてもパフォーマンスの低下を感じにくい特徴も相まって、買替え需要を喚起できずにいる。
直近2015年第4四半期、Appleは988万台のiPadを販売しているが、この数字は前四半期に比べてマイナス10%、1年前に比べると実にマイナス20%と、販売数の低下に拍車がかかっている状態だ。
そこで登場したのが、12.9インチで9.7インチのiPad Air 2の2枚分に相当するディスプレイの広さを持つiPad Proだ。
iPad Proは、名前の通り、コンシューマー向けと言うよりはビジネスやクリエイティブのユーザーにターゲットを絞った、iPadラインアップにおける最上位機種だ。だからといってコンシューマーに使いにくいかと言われるとそうではなく、MacBook Proのように、一般ユーザーにとっても大画面と高音質が魅力の大型タブレットに仕上がっている。
Appleにとって、iPadシリーズの低迷は、これだけたくさんのアプリがそろっていながら、パソコンやMacから完全に移行できるほどのアプリがそろっていない、というのが原因だろう。1つの仕事というよりは、複数のアプリにまたがる「一連の仕事」を丸ごと移行できなければ、iPadだけで済ませることにはならない。
iPad Proは十分に魅力を備えたハードウェアだ。あとはアプリで、ワークフローをiPadに移行するための取り組みを進めていかなければ、iPad Proも思うような結果は得られないだろう。
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