今の日本は“Jリーグ前夜”--「eスポーツ」の普及が遅れた理由と今後の展望 - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2016年01月03日 09時00分
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日本のeスポーツシーンはふつふつとマグマがたまっている状態

--eスポーツの名前が日本でも急速に使われ出し、耳にする機会が多くなったように感じますが、それはなぜでしょうか。

 さまざまな要因がありますが、まずeスポーツで動くお金の単位が「億」になったことです。僕が独立した頃の賞金は数千万円という規模感だったのですけど、それはインパクトがありそうでない。億となるとインパクトが出てきますし、みなさん興味や関心を示します。メディアにしてもニュースのバリューが出てきて取り上げやすくなるでしょう。

 もちろんプロゲーマーとして活躍する選手が出てきていることもひとつあります。対戦格闘ゲームは本流ではないとお話しましたが、それでもプロゲーマーとして扉を切り開いたウメハラ選手(梅原大悟氏)をみんなが応援する状況ができましたし、海外大会で活躍するだけではなく体験を書籍にして、プロゲーマーという職業を周知させたことも考えると功績は大きいです。そして新たな選手たちが登場して次々に活躍していますから。

 あとは大規模の会場で、日本から見たら異例というほどの動員規模で大会が開かれるようになったこともあります。盛り上がりが動員によって可視化されるようになったのも大きいです。演出もゲーマーだけがわかるようなものにはせず、エンターテイメントとして魅せる演出をDota 2やLoLが取り入れはじめ、eスポーツエンターテイメントイベントという形になっていきました。そうなると目につきやすくなります。

 2014年、LoLの世界大会が韓国のワールドカップスタジアムで開催されました。それぐらいの規模の会場を観客で埋め尽くしたのですから、その写真と映像が出たときにみんな驚いたわけです。世界のeスポーツシーンが日本の手の届かないところにいったがゆえにみんなが驚いて、この流れに乗ろうという形でeスポーツをいう言葉が使われ出したと思います。本当にこの1年の話だと思います。

--LoLに関しては国内リーグとして「LEAGUE OF LEGENDS JAPAN LEAGUE」が行われていたり、日本サーバのオープンが予定されているなど、日本でも浸透しそうな状況になっています。筧さんから見て、このほかに国内のeスポーツの盛り上がりを感じる周辺状況などはありますか。

 例えば、国内のPC市場は右肩下がりですけど、ここ数年のゲーミングPC市場は右肩上がりです。秋葉原の店舗でもゲーミングPCや周辺機器をまるまるワンフロアで展開したり、それこそ専門店までできています。ゲーミングPCメーカーさんも、この1年が勝負というほどに予算を投じているという話も聞きますし、周辺機器メーカー、店舗さんもビジネスチャンスととらえているようです。

 また東京アニメ・声優専門学校が、日本初のプロゲーマーを目指すための専門学校として専攻コースを用意しました。当初学校側は十数人規模の生徒で開始し、徐々に規模が拡大できればと思っていたようですが、前代未聞というような受け止められ方で大きな話題になりました。問い合わせや取材が殺到したと聞いていますし、現在はかなりの応募があると聞いています。当初の反応は賛否含めて様々ありましたけども、関心の高さを裏付けていると思います。

 eスポーツ専用施設のe-sports SQUAREも、街中にある碁会所や棋院、あるいはゲームセンターのようにプレイヤーが切磋琢磨(せっさたくま)出来るような場所が必要だ、というところからスタートしています。現在はさまざまなeスポーツイベントが行われるようになり、企業による貸し切りイベントや独自イベントの日も凄い勢いで増えています。

 このようなことからも、一般の方々からは見えてないところではふつふつとマグマがたまっているような感覚があります。あとは正しいところに噴火出来るように関係者が力を合わせていくことが大事ですね。

突然決定し、ノンスポンサーで始まった専門テレビ番組秘話

--2014年4月からは専門のテレビ番組「eスポーツMaX」(現在は「ゲームクラブ eスポーツMaX」)も開始しました。もちろんeスポーツの周知が目的だと思いますし、タイミングとしてもちょうどよかったと思いますが、これは計画していたことでしょうか。

  • 「ゲームクラブ eスポーツMaX」

 いや、むしろ逆で突然はじめることになりました。2014年1月上旬に一般紙の新聞でeスポーツに関する記事が取り上げられまして、それを見たTOKYO MXの後藤会長(代表取締役会長の後藤亘氏)が興味を示されたんです。それで説明に来て欲しいという話をいただき、1月末ぐらいに役員の方々を含めてeスポーツのことを説明したら、後藤会長が「番組作らない? 4月から」と。いきなりだったのですごく驚きました。

--即決で、しかも2カ月後にいきなり始まったんですね。

 さすがに2カ月ではスポンサーも探せません。今どきスポンサー無しで番組作るのは、業界の常識ではありえないのですが、局の負担でやると。業界では珍しいノンスポンサー番組で始まりました。2カ月で番組を準備することもありえないのですが、旧知の制作会社や関係者に連絡し、番組スタッフにeスポーツのことを一から説明して、出演者のブッキングもいろいろな方にお願いしました。本当に、なんとか放映までこぎ着けた、という表現が正しいですね。

--番組内容で留意しているところはどこでしょうか。

 目指しているのは「素人が見て、プレイヤーが何をしているのかがわかること」です。参考にしたのは囲碁と将棋です。街には碁会所や棋院があって、そこにいけば誰かと対戦できるだけではなく、うまい人がいて教えてもらうというイメージです。番組でもリプレイ解説など、その場面でなぜこうしたかがわかるような説明を入れてますけども、あれも将棋解説をイメージしています。

--番組としても1年半以上放送されています。

 ノンスポンサーだったこともありますが、番組も2クール続けばいいほうだと思ってました。ただ東京ローカルということもあってか、番組をYouTubeにアップすると地方の方が見てくださっているようで、TOKYO MXでネット配信している番組のなかでは再生回数も上位のほうです。番組の反響もあって今はスポンサーがついてくださっているということもありますけれども、TOKYO MXさんでも続けていくべきと思ってくださっているものととらえています。

日本eスポーツ協会は競技者団体。JOC加盟を目標に活動

--新たに日本eスポーツ協会(JeSPA)が立ち上げられましたが、経緯などを教えてください。

 JeSPAには事務局長という形で関わっています。もともとは協会として設立する前に、2007年に日本eスポーツ協会設立準備委員会の立ち上げに関わったのが発端です。そのころにアジア室内競技大会でeスポーツが正式種目として採用されため、そこに選手を送り出すためには協会が必要、ということが背景にありました。当時は韓国の選手を招いて日韓戦を行ってアピールをしたこともありましたが、さまざまな事情で一時お休みする形となっていました。

 それ以降、独立してからも将来的には協会が必要と思ってタイミングを伺っていて、その時がきたと思い、2015年4月に一般社団法人化しました。そして準備委員会でも会長を務めていた衆議院議員の西村康稔さんに、改めて会長をお願いしました。そのときは西村さんが内閣副大臣を務めていたことから就任が難しかったのですが、それでも待つ形にしまして、この10月に第1回eスポーツ日本選手権大会の開催とあわせて対外的に発表しました。

 誤解もあるようなのですが、この協会は業界団体ではなくプレイヤーのための競技者団体です。業界を取り仕切るのが目的ではなく、競技者が海外で活躍できるようにするなど、よりよい環境でできる後押しをする団体です。大会も実施しますが、あくまで競技環境を提供することを狙いにしているため、巨額な賞金を用意することはしません。年間を通して競技者が競技できる環境の提供、もしくは大会の後援をしていく形にして、優秀な競技者を海外に送り出すサポートや更には日本での青少年育成などに寄与できればと考えています。

 今は2017年のアジア室内競技大会に向けて、日本オリンピック委員会(JOC)への加盟を目指すのが短期的な目標です。

--会長の西村さんはどのような方でしょうか。

 経済産業省出身の衆議院議員で、東京都ボクシング連盟の会長も務めているようにスポーツ事情にも明るい方です。ゲーム業界という産業とも関係があり、スポーツにも詳しく、さらにある程度若い方という理想の条件にピッタリだったのが西村さんだったこともあって、ツテをたどってお願いをした形です。最近は秋葉原界隈のeスポーツ事情を視察しまして、その時に激励したプレイヤーが先日のカプコンカップの優勝者となったかずのこ選手だったことで、その結果にとても喜んでいらっしゃいました。

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