パナソニックは12月18日、LED光源やその光源で照らされた対象物にスマートフォンをかざすだけでさまざまな情報が受け取れる「光ID」の技術説明会を開催した。
光IDは、2014年の12月に技術開発を発表。その後JR九州とともにICTによって九州の魅力を発信する「WONDER JAPAN TRIP」や東京・有明のパナソニックセンター東京にオープンした「Wonder Life-BOX」内で展示するなど、その技術を公開してきた。
2016年4月には、光ID技術を用いた情報連携サービスの事業を開始。すでに東京ビッグサイトへの導入や、東京急行電鉄の二子玉川駅で試行設置が決まっている。
光IDは、可視光通信と呼ばれる技術の1つで、送信機と受信機の間でIDを通信できるというもの。同様の特徴を持った技術も登場しているが、パナソニックの光IDは、受信機として普及率の高いスマートフォンを採用していることが特徴だ。
これにより、送信機側の整備が進めば、専用アプリをスマートフォンにダウンロードするだけで、多くの利用者を獲得することが可能。2016年には2000万人を超えると言われる訪日外国人に向け、情報提供ができるツールとして期待が高まっている。
パナソニックAVCネットワークス イノベーションセンター主幹の川合啓民氏は「街中にはLED看板が増えており、それに送信モジュールをつければ送信機になる。スマートフォンで受信できればメディアとして成り立つのではないか」と普及に自信を見せる。
BluetoothによるiBeaconやQRコードなど、スマートフォンを利用した情報提供技術は今までも登場しているが、発信機が複数あると、どこからの情報を取得しているのかわかりづらかったり、近寄らないと認識できなかったりと、課題もあった。
光IDでは、看板やサイネージにスマートフォンを向けかざすだけと、直感的に操作ができるほか、受信速度が早い、光が届けば前に人が立っていても受信できるなど、使い勝手が良いという。「送信機であるLED看板などの前に人がいても、サービスレベルが落ちず、奥行きのある情報提供ができる」(川合氏)ところも光IDならではのメリットだ。
パナソニックでは、駅の電光掲示板や街中のLED看板に活用することで、行き先をナビする情報配信や施設案内、クーポンが受け取れたりするオムニチャネルでのサービスシーンを想定。さらにスポットライト型のLEDを使えば、ファッションショーのモデルを照らすLEDにIDを仕込み、スマートフォンからファッション購入サイトにリンクするなどの将来構想までイメージしている。
今後は、オムニチャネル市場の拡大を事業機会として捉え、ID連携のプラットフォームサービスを展開していく予定。送信機、光IDのコアプラットフォーム、ソリューションサービスの3つのレイヤーによるサービスを展開する。
12月19~20日に、東京・銀座で開催した体験イベント「ヒカリで銀ぶら」では、松屋銀座、銀座三越、和光、鳩居堂など計13店舗で「ヒカリクーポン」がダウンロードできるサービスを実施。こちらのイベントではiBeaconと併用することで、サービスを運営しており、専用アプリ「ヒカリで銀ぶら」も用意した。
今回、対応したのは「iPhone 5s」以降のiOS 8~9をインストールした端末のみで、安定性を重視したという。クーポンはIDを取得後、データをインターネット経由で入手するが、デモでは瞬時に獲得できていた。「IDの取得であれば、かかる時間は0.2~0.3秒程度。ストレスを感じない速度を考慮して作っていった」(川合氏)と話す。
パナソニックでは「光ID」送信機として、総機能を内蔵した液晶ディスプレイと内照式・導光式LED看板用送信機を、4月から順次発売する予定。当初は日本での導入を進めるが、将来的には海外での展開も考えていきたいとしている。
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