テレビ用スピーカは数多く登場しているが、シャープが11月に発表した「サイドバーシアターシステム HT-SP100」(想定税別価格:5万円前後)は、テレビ画面の左右に設置できるサイドバータイプを採用する。サウンドバーと呼ばれる一体型が市場の大半を占める中、サイドバーシアターはどんな意図で生み出されたのだろうか。
テレビが薄型化されてから、オーディオ部分の強化は長らく課題の1つだった。筐体のスリム化、ミリ単位で細くなっていくベゼルと、薄型テレビのデザイン性を追求していくと、スピーカの場所を確保することが難しくなる。
その対策の1つとして登場したのたテレビ用スピーカだ。ラックと一体化したシアターラックタイプや5.1ch、7.1chサラウンドを再現できるシアターシステムタイプなども登場しているが、現在の主流はサウンドバーと呼ばれる一体型モデル。テレビ画面の下に置けるスリムデザインで、2014年の台数構成比は78%に上るという。
シャープでも液晶テレビ「AQUOS」と組み合わせられるサウンドバーシステムをいくつかラインアップしているが、ここ最近のテレビの設置環境は「サウンドバーですら設置が難しい状況がある」(シャープのコンシューマーエレクトロニクスカンパニーデジタル情報家電事業本部国内事業部オーディオ推進部長である阿部克郎氏)という。
もともとサウンドバーがここまで支持されてきた要因の1つはテレビの左右にスピーカの置き場所がなく、下に置くしかないという“事情”があったからだ。しかし最近の薄型テレビは、スタンドの形状がモデルごと異なるほか、スタンド自体が低いモデルもあり、画面にスピーカがかぶるなど置けないケースが出てきている。
ユーザー調査からこのような使用実態を掴んだシャープは、「テレビに最初からついているようなスピーカの形状」(阿部氏)に着目。設置場所に困らないフローティング型のサイドバースピーカを生み出した。
スピーカの設置には、テレビの背面にある壁掛け金具取り付け部を利用。同梱の「VESA取付けスピーカー用アーム」を使用することで、テレビに搭載されているスピーカのように画面の左右にスピーカを設置できる。スピーカ自体は宙に浮いている形になるため、設置場所に困ることはない。「吊るしたら解決するという発想」(阿部氏)がこの形状をもたらした。
サウンドバーは画面の下に設置するため、音が下から聞こえて定位感に欠けるというデメリットがあったが、スピーカを浮かせることで、その問題を解決。スイーベル機構付きのテレビでも、スピーカが一体化されているため画面を自由に動かせる。
「テレビの音を見直してもらいたい」(阿部氏)との思いから、音質にもこだわった。96kHz/24bitのハイレゾ音源を再生できるほか、テレビ放送の音声もハイレゾ相当へと高音質化するアップコンバート機能を内蔵する。
高音質技術には、米国カリフォルニアに本拠地を置く「eilex(アイレックス)」が協力。従来の1点での音圧補正から、複数のレイヤーを用いた音響パワー体積密度周波数特性から補正特性を算出する「PRISM(PRImary Sound Measurement)」技術を採用したほか、超高性能フィルタ「VIR Filter(Variable-resolution Impulse Response Filter)」の搭載やアップスケール信号処理技術「Eilex Harmony」を備える。
「アップコンバートしたときに、単純に音を拡張しただけではハイレゾとはいえない。超音波領域をいかに自然に埋めていくかが大事。アイレックスでは独自のアルゴリズムを使って、自然なアップコンバートを実現している」(アイレックスの代表取締役朝日英治氏)と話す。
独自のフローティング型とアイレックスの高音質技術によって開発されたHT-SP100は、テレビ用スピーカならではの機能として「3.1chモード」を内蔵。これはAQUOSのスピーカをセンタースピーカとして使用することで再生でき、セリフの定位感が増し、聞き取りやすさがアップする特徴を持つ。このほかシネマ、ミュージック、ゲーム、スポーツ、ニュース、ドラマなどジャンル別に自動調整する「ジャンル連動機能」も装備した。「テレビ放送、またBDレコーダーなどに録画した番組の音をよくすること重視した」(阿部氏)というHT-SP100。サウンドバーが主流のテレビ用スピーカ市場に新たな形を提案している。
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