菊地氏:リズムゲームとして楽曲数が必要という前提があって、オリジナルバンドの楽曲を新たに作ることは決まっていましたが、すぐに量産できるものではありません。それと、コンテンツの世界観として“バンドが音楽の世界の頂点を目指して成り上がっていく”というテーマがありました。実際の世界でも発展途上のバンド、世の中で埋もれてしまっているいい楽曲はたくさんあります。そういったバンドや楽曲を取り込んでいこうという話になり、林田さんに入っていただいた形ですね。
町田氏:私がコンタクトを取りたいと思ったバンドがあれば、林田さんの会社にお願いをしてレコード会社や事務所など、多角的に声をかけてもらいました。アーティストさんには楽曲を聴いてもらう場、そしてプロモーションとして活用してもらい、こちらは楽曲を提供してもらってゲームに活用するという双方にメリットがある関係として展開できるのではと思いました。サービス開始のタイミングでは、登場した半分のバンドがタイアップアーティストでしたね。
町田氏:世界観の“成り上がり”にも通じるのですが、アーティストさんの知名度で売るコンテンツにはしたくないというのがあります。なので、あくまで楽曲のクオリティありきです。誰が聴いてもいいと思える曲を基準としています。
林田氏:町田さんからお話をいただいたとき、音楽に携わる者としてこの取り組みは珍しいと思いました。こういったコンテンツと音楽がコラボする場合、普通はアーティストの知名度を借りて展開することが多いからです。そして音楽ニュースとして取り上げていただいて、音楽ファンが入ってくるような流れを作ったりします。
それに対してSHOW BY ROCK!!は新しいプラットフォームにしようという話でしたので、知られていないバンドでもこれから芽が出て伸びるかどうか、僕らも含めて今後が期待できるかはすごく大事にしてますし、一緒に成長したいと思っています。
町田氏:この試みに対して自ら手を挙げてくれたアーティストもいますし、アーティストの多くがキャラクターに愛着を持って接してくれているのは、よくあるタイアップやコラボとは違うからだと思っています。プロジェクト側とアーティストとの距離感はとても近いですし、やはり長く付き合ってほしいですから、長く活動が続けられるポテンシャルがあるかどうかもポイントですね。
町田氏:基本スタンスは、私たちが本当にお願いしたいと感じている方々で、アーティスト自身もSHOW BY ROCK!!に参加したいという意志をお持ちいただいている方々とやっていきたいと思っています。なので、今参加しているタイアップアーティストさんは、全てこちら側からお願いをした方々です。もちろん紹介や推薦をいただいて知った方や楽曲もありますが、聴き込んたうえでこちらから声をかけました。なので、いわゆる惰性とか大人の事情で決めることはしていません。
林田氏:そこがすごいところでもありますね。音楽に限らずどんなコンテンツでも大人の事情や力が働くこともあるかと思いますが、タイアップという名前の響きからそのように思われそうですけど、そういうことは一切ありません。私のところにもさまざまなお話をいただいて、ネームバリューでいけば参加もありだろうと思っていたアーティストでも、町田さんは「違う」とハッキリ言います。
町田氏:林田さんから提案を受けても、お断りさせていただいた方もたくさんいらっしゃいます。ありがたいことに最近はお声がけをいただく機会も増えましたが、そこは譲らない部分ですね。
町田氏:コンポーザーのyksbさんに楽曲提供をお願いしたのがきっかけです。ただyksbさんはボーカロイドで楽曲制作をされていたので、生声のボーカル楽曲を、とお願いしたところボーカリストのMiLOさんと31STYLEさんを見つけていただいて。それでyksbさんから、このままユニットとして活動していくと言ってくださいました。普段は個々に活動されていますが、SHOW BY ROCK!!のときは集まるという、こういった展開もひとつの成果かもしれません。
町田氏:オオカミのバンド「ガウガストライク」には、カフカというバンドが楽曲を提供してくれています。そのボーカルのキンタウルスというキャラクターが「金」と大きく書かれたTシャツを着ているんですね。メンバーからは“ダサT”と言われているけど、本人はかっこいいと思っていて、そのギャップ感がかわいいというキャラクターです。これはカフカのメンバーと話をしているときに、キンタウルスのモチーフになったメンバーの方が変わったTシャツを着ていることがあったというエピソードをもとにしています。
また、「しにものぐるい」のボーカルであるまりまりは、タイアップアーティストの植田真梨恵さんをモチーフにしていますが、彼女がツアーで家を離れると、一緒に暮らしているネコのことが心配でさみしいと話されていたので、まりまりの頭にネコを載せています。ほかにもタイアップアーティストに関連したキャラクターの多くは、エピソードの節々にアーティストのパーソナルなところがキャラクターに踏襲されて、本人に近しい存在に見えてきて、愛着を持ってもらいたいという思いからきています。
林田氏:本人が入れてほしいというエピソードをそのまま入れているわけではありません。SHOW BY ROCK!!はアーティストとすごくコミュニケーションを取っているプロジェクトで、なんでもない雑談からエピソードを盛り込み、リンクしています。
町田氏:みなさんからはかっこよく描いてほしいと言われますけど、それは聞かないです(笑)。あくまでもキャラクターとしての個性、そして愛してもらえることが大事だと、デザイナーも良く話しています。そもそも登場キャラクターは本人とイコールにはしていません。あくまでキャラクターとタイアップアーティストは別物であって、パーソナリティのエッセンスを入れている形です。そこをうまく解釈して提示して、みなさんに喜んでいただいています。
林田氏:私から見ていて、町田さんがバンドをやっていた経験もあってか、アーティストとわかり合うのが早いです。話を引き出しやすいこともあって、それが距離感の近さにつながっているのと同時に、みなさんに愛されるキャラクターとしてうまく反映させているところなのかもしれません。
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