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スマートプラチナ社会に向けた医療ITの課題とは:「Health 2.0 Asia – Japan」2日目パネル - (page 2)

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遠隔医療の一端を担う患者・医師間コミュニケーションスペース

 鈴木氏は、エーザイが行っている認知症ナビゲーションサービス「わすれなびと」について説明した。「インターネット上でも安心かつ快適に暮らせるスペースが必要」という観点から始まった同サービスは、本人や家族はタブレット、支援チームはPCを使って認知症患者の見守りや医療関連のアプローチを行う。

 鈴木氏は、「患者と医者間のコミュニケーションスペースを設けて、病院に出向かなくとも簡単な診断や情報共有を行う仕組みを用意した」と述べ、同サービスが遠隔医療の基盤としても利用されていることを説明した。さらに今後は、電子カルテ情報の一部共有や、認知症患者の問題である“薬の飲み忘れ”を可視化する仕組みも導入する予定だという。


「わすれなびとシステム」の全体概要

 シスコシステムズの田村氏は、多数のネットワークデバイスを扱う自社の医療分野に携わる取り組みとして、「医療ベンダーと協業しながら、アプリケーション連携や院内の動線分析、院内無線LAN、ビッグデータ解析を展開している」と説明する。具体的には「患者のバイタルがしきい値を超えたらIP電話で医師に連絡する仕組みや、電子カルテベースのビデオ会議システムを導入している」(田村氏)という。

 続けて、地域医療連携の基盤となる製品として「MDES(Medical Data Exchange Solution)」を紹介した。「医療施設間で情報連携が必要なケースが増えているため、IHE(Integrating the Healthcare Enterpris、医療情報システムの相互接続性を推進する国際的なプロジェクト)に基づいたシステムを開発・運用している。ルータとネットワークモジュールを組み合わせ、異なる病院でも患者に紐付く情報をヒストリカルに扱うことができる」(田村氏)。MDESは、すでに海外では導入実績があり、今後は日本での展開を目指しているという。


シスコシステムズの「MDES」。患者を中心とした医療記録を共有するソリューションだ

遠隔診療のための法整備や医療ITプレーヤのエコシステムが課題

 各人のプレゼンテーションが終わると、関口氏は「クラウドでデータを蓄積し、スマートフォンをヒューマンセンシングツールとして使うようになると、これまでにないサービス展開が可能になる」と現状を説明し、「技術革新によって登場するであろう医療サービスの向上と課題」についてパネラーに意見を求めた。

 室岡氏は、「患者自身が薬を管理する仕組みは以前からあるものの、(医療ITの向上により)服薬支援の可能性が広がっている。われわれは新たなシステムの開発や拡張に投資を続けていく」と製薬会社のスタンスからサービス向上の意義を語った。

 中後氏は、遠隔医療の課題として「遠隔診断も認められず、診療報酬につながらないのがネック。その縛りを外すと大きく変化するはずだ」と法制度の問題点を指摘。さらに、「既に病理診断などさまざまな面でIT化が進んでいるものの、標準化されたツールは現場で使いにくい問題がある。連携の必要性が高い医療機関同士は同じツールを使うようにするなど、場面に応じた使い分けが必要」(中後氏)と医療現場ならではの問題に言及した。

 田村氏は、海外と日本の医療を比較して、「日本は1つの企業が1つのソリューションを提供するにとどまっている」とエコシステムの欠落を指摘した。実際問題として病院にITシステムを導入する際は1社がすべてのデバイスやシステムを担うのは難しい。そこで、グローバルアライアンスやエコパートナーシップが重要になるというのが田村氏の考えだ。

 鈴木氏も自身が携わるプロジェクトの視点から「認知症患者や患者予備軍が、忘れてしまう前に記憶を登録するための仕組みを増やさなければならない。さらに、患者にとって記憶をデジタルだけで残すことには不安があるため、印刷などの選択肢も用意する」と「わすれなびとシステム」の機能拡張について説明した。

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