医師限定のソーシャルメディア「MedPeer 」を運営するメドピアは11月4~5日の2日間、ヘルステックのグローバルカンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 」を都内で開催した。
Health 2.0は2007年に米国でスタートした医療・ヘルスケア分野のテクノロジ(ヘルステック)動向と、それを活用した先進事例を紹介する国際会議。日本での開催は今回が初めてだ。
1日目の最初のパネルディスカッション「Government 2.0 “Open Data. Open Government.”」では、医療とITの関わり方を題材に、各国政府の視点で活発な議論が交わされた。
司会は一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構所長の西村周三氏が担当し、厚生労働省 社会保障担当政策統括官の武田俊彦氏、同省保険局 医療介護連携政策課 保険システム高度化推進室長の赤羽根直樹氏、在日米国大使館 上席商務官・政治学博士のスティーヴン・J・アンダーソン氏、NHS England(英国イングランド国民医療サービス) Head of Technology Strategyのポール・ライス氏の5人が登壇した。
まず、日本における医療とITの政策について、厚生労働省の武田氏が説明した。厚生労働省が掲げる20年後の保健医療システムのビジョン「保健医療2035」では、その未来像の1つとして「情報基盤の整備と活用」を挙げている。具体的には、保健医療データベースを整備し、ITを活用して医療の質の向上、遠隔診断などを実現するとしている。
現行の保健医療データベースの課題には、(1)医療保険のデータベースが連携されていない、(2)国民の生涯にわたる医療データがデジタルで管理されていない、(3)臨床データベースが管理されていない、(4)電子カルテの標準化などITインフラが整備されていない――の大きく4つあると武田氏は指摘する。
これらの課題の解決に向けて、日本政府では、マイナンバーと紐づく「医療ID」の仕組みを作り、国民1人1人の医療データ、医療保険などの情報を統合する方針だ。「2015年度中に医療IDの骨子を固め、2017~2018年の運用開始を目指す」(武田氏)
また、ITインフラの整備に向けて、「さどひまわりネット」や「長崎あじさいネット」など既存の地域医療ネットワークを連携する。「そのために、補助金を出して各ネットワークを標準化する」(武田氏)という。
続いて、厚生労働省の赤羽根氏が、レセプト(診療報酬などの請求データ)電子化の動向と、レセプトデータベース「ナショナルデータベース」について説明した。
厚生労働省が、保健医療機関、保険薬局に対してレセプトのオンライン提出を義務化したのは2006年4月。レセコン(レセプトをプリンタで印刷できるシステム)を購入してから5年、またはレセコンのリース契約期間中である場合はオンライン提出を猶予していたが、この猶予措置は2015年3月末で終了した。その結果、レセプトの電子化率は現在98.6%まで上昇した。
ナショナルデータベースに蓄積されるレセプトデータは年間約1億4000万件。これに加えて特定健診・特定医療保健指導で取得する身長、体重、血圧、中性脂肪などのデータが個人情報を削除した形で年間約2000万件入力されている。赤羽根氏は、「この膨大な医療データをどう使うかが今後の課題。2016年3~4月をめどにオープンデータ化も計画している」と話した。
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