スマートプラチナ社会に向けた医療ITの課題とは:「Health 2.0 Asia – Japan」2日目パネル - (page 3)

マイナンバーと「医療ID」は一元化するべきか否か

 次に関口氏が提示したテーマは、個人情報保護法改正にまつわる「新しい行政の動き」について。

 中後氏は、「地域医療連携においては患者情報の管理が課題であり、マイナンバーの運用は以前から希望してきた」とする。ただ、政府が2018年の導入を目指している「医療ID」をマイナンバーと連携させる運用については、「ユニークな番号を複数保持する必要があるため複雑になる」と不安を示した。「マイナンバーと医療IDの連携は難しいことではないが、番号の運営機関が増えるのはマイナスである。一元化を目指すべきだ」(中後氏)

 この件について田村氏は、「(マイナンバーと医療IDを)1つの番号で運用するのはシステム的に難しい。欧州でも複数の番号で運用している。現実的には連携システムを用意した方が簡単だ。ただ、異なるアーキテクチャ同士をつなげるための標準化が大事になる」とシステム設計の立場から意見を述べた。

 室岡氏は番号を一元化するリスクに言及しつつも、メリットの大きさに注目している。「日本が世界に誇る制度の1つに母子手帳がある。1冊の手帳で管理できるのは本人や医療提供側にもメリットがある。母子手帳のようなシステムを全年齢層に広げるべきだ」と述べた。

 関口氏が「連携における医療情報の秘匿」について質問すると、中後氏は「(医師や医療機関にとって)連携する際に抵抗感がある“見られたくない情報”を突き詰める必要がある。運用ルールを統一すれば医療機関同士の連携は難しくない」との考えを示した。

 鈴木氏は、情報提供側の立場から「医療情報の電子化は患者や医者が便利になると同時に、新たな医療の発展に貢献するべきだ。今はその方向に向かっている」と発言。田村氏も「病院によって差はあるが、医療関係者の意識は変化しつつある」と説明した。

ウェブカメラの映像から患者の心拍数を検出

 最後に、スマートプラチナ社会を支えるITの例として2つのデモンストレーションが行われた。

 1つ目はバーズ・ビューが提供する救急医療管制支援システム「e-MATCH」。救急隊員が患者情報をタブレットに入力すると、適切な一番近い病院をピックアップして病院に情報を送信する(医療機関側に置かれたタブレットが受信)。

 病院側に設置されたタブレットからは、混雑状況や当直医の状況をワンタッチで登録できるようになっており、救急患者の情報を受信した病院スタッフがタブレット上で当直医全員の状況を確認した上で受け入れ可能かどうか返答できる。

 バーズ・ビュー 取締役(マーケティング&アライアンス担当)の夏井淳一氏は、「(e-MATCH導入について)当初は病院側から反発があったものの、地域の緊急医療に役立つことを説明すると理解してもらえた」と語った。


デモンストレーションを行った夏井淳一氏

救急搬送や情報共有を素早く行うシステム「e-MATCH」

 続いて、台湾Ironyun Inc.がビデオ分析システムを医療現場に役立てるデモを披露。固定カメラに映っている人物が倒れるとアラームが鳴るシステムや、通常のウェブカメラで映した人物の映像から心拍数を検出するシーンを紹介した。

 同社のPaul Sun氏は「高齢者の服薬など多くの医療分野で役立つ。既に米国や東南アジア、台湾などで導入済みだ」と説明した。


Ironyun Inc. Taiwan President and CEOのPaul Sun氏

映像情報を増幅して分析すると、呼吸のタイミングから割り出された心拍数が確認できる

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