10月1日、内定が解禁され、多くの企業で内定式が実施された。数年前にソーシャルメディアを活用した就職活動、通称「ソー活」が流行ったが、今はどうなっているのだろうか。ソー活の現在とともに、大学生のSNS利用の現状と危険性について紹介する。
「ソー活」では、ソーシャルメディアを通して企業に関する情報を得ることができる。社員の声が直接聞けたり、ウェブサイトなどでは得られない企業に関する情報が得られるため、公式FacebookページやTwitterアカウントなどをチェックしている学生は多い。就活生同士で情報交換したり、企業に勤める先輩社員などとの交流ができる点も就活生にとって嬉しい。
一方で、企業からの情報はほしいけれど、自分の情報は知られたくない学生が増えている。彼らは、「企業にコメントして他の企業に『そこに入るのか』と思われたくない」「友達に就活頑張ってるとか思われたくない」などと言う。「情報は得ているけれど、積極的に発信したりしている学生はいないと思う」と大学3年生A太は言う。A太のような学生は増えており、SNSを真に活用できている学生はあまり多くはないようだ。
就活生や新社会人を対象にした日本労働組合総連合会の「就職活動に関する調査」(2014年6月)によると、ソーシャルメディアを就職に活用した割合は31.5%。「企業の公式アカウントをフォローした」(11.8%)、「就活仲間とつながりを持った」(10.8%)、「就活情報を発信するアカウントをフォローした」(8.3%)などとなった。一方、「企業側にみられたくない投稿を削除した」(5.1%)や、「ホンネを書くアカウントを特定されないようにした」(4.2%)、「就活用のアカウントを作った」(2.9%)など、情報管理した学生もいる。
ソー活をしなかった学生に理由を聞いたところ、「自分のプライベート情報は知られたくないから」(36.5%)、「“ソーシャルメディアはプライベート”として区別したいから」(23.9%)、「SNS上で“ボロ”が出るのが怖いから」(16.4%)など、公私は分けたい意識が強いことが分かった。
大学生たちは、友達には注目してもらいたいが、会社とは距離を置いて付き合い、公私を分けたい意識が強いのだ。米国では就職時に、それまで使っていたFacebookアカウントを消して新しく作り直すという話を聞くが、日本の大学生たちも似たようなことをしているのだ。実際、リテラシーが高い学生は、Twitterで公開用の本名アカウントのほかに匿名アカウントなどを用意し、鍵をかけて運用している例も多い。
Twitterに問題ある投稿をして炎上する通称“バカッター”には、大学生が多く含まれている。特に、“バイトテロ”と呼ばれる、アルバイト店員が問題行動を起こして企業や店舗に迷惑をかける行為は、多くが大学生によるものだ。炎上を起こした学生は、停学や退学、内定取り消し処分などになっている。
JOBRASS就活ニュース2016調べによると、人事採用担当者の37.7%が候補者をSNS(Facebook、Twitterなど)で検索すると回答。また、19.8%が「投稿内容を重視する」と答えている。実際、ある人事採用担当者は、「最終候補者は検索サービスとSNSで検索して考慮に入れる」と明言している。
企業がCMをうったり営業努力をして築き上げてきたイメージも、アルバイトによるたった1回の炎上で地に落ちてしまうことがある。中には、炎上により閉店してしまい、炎上を起こした学生に数千万円におよぶ損害賠償請求をしたところもある。企業はリスクが高い炎上を引き起こす可能性がある学生を警戒しており、事前に検索して採用を決める際に考慮に入れるところが増えているのだ。
炎上を起こさなくても、学校を退学処分となった学生もいる。保育士専門学校の教員がある女子学生の名前を検索したところ、彼女のFacebookアカウントを見つけた。彼女はFacebookで、恋人との性的な写真を誰もが見られる状態で公開していた。
保育士の学校は、教育実習をする。実習先の学校や保護者に検索して見つけられてしまった場合、受け入れ拒否などにつながる可能性もある。そこで、彼女は退学処分となった。抗議したものの、この処分は覆らなかった。企業や大学などが、炎上による被害を非常に強く警戒していることは忘れてはならない。
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