ファッションに最先端のデジタル技術を積極的に取り入れ、世界から注目を集める2人のデザイナー、アンリアレイジ(森永邦彦氏)とソマルタ(廣川玉枝氏)の作品を集めた展示会「デジタル×ファッション 二進法からアンリアレイジ、ソマルタまで」が、神戸ファッション美術館で開催された。両者の展示会は過去にも東京などで開催されているが、これほど大規模で本格的な展示は初めてだという。会場内では数多くのアパレル作品を直接見ることができるほか、デザインパターンや制作素材、インテリアや自動車メーカーとのコラボレーション作品も展示され、ファッションというよりもアートイベントのような雰囲気となっており、普段、アパレルに関心が少ない人でも興味が持てる内容になっている。
アンリアレイジは、光で変化する幻想的なテクスチャを開発から手掛けるなど、先端テクノロジをファッションに取り入れることで知られる。森永氏は、普段の生活で目にするテクノロジや興味のあるものをデザインの素材として取り入れていると言い、作品のデザインだけでなくテキスタイル企業と一緒に繊維を開発するところから取り組んでいる。その一つ、紫外線に素早く反応するフォトクロミック分子を取り入れた新素材が使われている「LIGHT」という作品シリーズでは、真っ黒な服にブラックライトを当てたところだけ華やかな柄が浮かび上がる。逆に真っ白にデザインされた服を太陽の光(紫外線)で一瞬にして別の色へと変化させる「COLOR」という作品シリーズも展示された。
IT業界から見れば、光を使ってデザインを変える手法はプロジェクションマッピングの技術を使えば実現できるのではないかと思ってしまうが、あえて素材から開発し、服のデザインを最大限に活かしているのがアンリアレイジならではであり、2015年3月にパリで開催されたファッションウィークでも高く評価された理由なのだろう。一方で、プロジェクションマッピングを得意とするクリエイティブ集団のライゾマティクスと光と影をテーマにしたインスタレーションのコラボ展示を今年の春頃に行っており、ムービングライトを使って作品の特徴を最大限に見せる演出は今回の会場でも見られた。
伝統的な織物技術の手法と3Dプリンティングを組み合わせ、身体そのものをデザインするような作品で人気を集めているソマルタのスキンシリーズは、マドンナやレディー・ガガが着用したことでも知られる。着物のように型紙から綿密なデザインを作り上げ、そこへ民族衣装の要素を組み合わせることで、女性らしいしなやかさとファッションが持つ力を両立させている。廣川氏は、デザインは豊かさや内面をサポートするもので、身体との一体感を目指した服をデザインすることは、パートナーロボットを開発するのと発想は似ているかもしれない、とコメントしている。
また廣川氏は、ヤマハと一緒にドレスアップして乗れる車椅子をデザインしたり、レクサスをファッションの視点から表現した「レクサスドレス」のデザインなどを手掛けている。「LEXUS DRESS」はデッサンからミニチュアモデルを3Dプリンターで作成、展示したところ好評だったため、現在は実物大サイズを制作することになり、今回は出力済みのパーツの一部が展示された。
ウェアラブルの普及から再び強まり、始まったファッションとデジタルの融合だが、Appleがファッション業界の人材採用に力を入れたり、両業界の融合をテーマにしたイベントを開催する「DECODE FASHION」が注目を集めるなど、今後もますます動きは加速すると見られている。今回の2組のファッションデザイナーによる作品は世界でも最先端の動きであり、今後どのような流れにつながるかを知るきっかけになったかもしれない。
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