実は、mixi時代でも同様の行動は見られた。「友達が増えすぎたので整理したいと思います。コメントをくれた人はマイミクを切りません」という旨の投稿だ。ブロックと並んで、友達を切られる行為は相手にダメージを与える。切られたくない人たちはこぞってコメントを書き込んでいた。
自分では友達関係を気軽に切りながら、友達を切られることには非常にナーバスになっている人が多かった。今も昔も、自分をSNSから友達削除した相手を突き止めるツールは人気だ。犯人探しに躍起になり、相手を見つけたらものすごい勢いで糾弾している人を見かけたこともある。
どちらも、自分本位で勝手な行動だ。SNSでの友達関係は軽くなっているが、同時に人間関係で優位に立ちたい、他人から軽く扱われたくないという心理がうかがえる。
大学1年女子B葉いわく、「(SNSでの友達が)100人はいないと友達がいないと思われるから、あまり親しくない友達も追加した」ことがあるという。高校2年男子C太は、「もっと(SNSの友達が)ほしい。フォロワーが多いと自慢できるしかっこいいから」と言う。C太は、リツイートが増えることでフォロワーが増えることを期待してパクツイをしたこともあるし、相互フォローを募集したこともある。
ところが、友達を積極的に増やしておきながら、同時に積極的に「切る」。「LINEとかTwitterの友達はうざくなったら切る」とB葉は言う。「SNSでくらい快適でいたいから、元彼とかうざい先輩とかはブロックしてる」。
ソーシャルメディアで積極的に交流しているC太は、Twitterなどで言い合いになったりすると、相手を切ってしまう。「どうせネットで知り合った人だから」というのが理由だ。「切っても友達はまたすぐに増えるから」と言われ、反応に困ってしまった。
友達づきあいには濃淡があるものだが、彼らの場合、親しい人もあまり親しくない人も同じ「1」になっている。SNSでのつながりは誰とつながっているかよりも、数の多寡が注目される傾向にある。同時に、SNSにおける「いいね!」やスタンプは、誰からもらったかよりももらった数の方がクローズアップされがちだ。そのため、とにかく数がほしいし、つながる相手は誰でもよく、つながるのも切るのも安易にとらえてしまうのだ。
SNSでは、自分が主体となって人間関係を増やしたり整理したりすることが容易にできる。しかし、実際の人間関係はそのように処理することはできない。SNSでは数が重要かもしれないが、実際の人間関係は誰とどのような人間関係を築けるかが重要となる。
人間関係を築くことは難しい。SNSで数だけ増やしたり、コントロールしたりしようとしても本当の関係は生まれない。人間関係は、その後の人生を豊かにする大切な財産だ。自分が中心となってコントロールしようとせず、長く続く良い人間関係を築けるよう、子どもにもアドバイスしていきたい。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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