ソニーモバイルコミュニケーションズとZMPは8月24日、8月3日付で合弁会社「エアロセンス株式会社」設立したことを明らかにした。7月に自律型無人航空機(ドローン)を活用した産業用ソリューションを開発・提供する合弁会社を設立すると発表しており、その詳細が明らかになった。
ソニーモバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長 兼 CEOの十時裕樹氏は、「ジョイントベンチャーがどういう意味を持つのか。ソニーモバイルはスマートフォンを主力にビジネスを展開しているが、それだけではいろいろな意味で成長が望めない可能性がある。新規事業の一環としてビジネスをしていく」と説明した。
合弁会社の設立に至るきっかけは2014年4月、十時氏が知人にZMP 代表取締役社長 兼 CEOの谷口恒氏を紹介されたことだったという。
谷口氏は「面談の終わり際に、ソニーモバイルが社内でドローンの研究をやっていると聞いて興奮した。その場で一緒に研究していこうとプロジェクトがスタートした。十時氏はエアロセンスの産みの親と言える。2014年11月から(ソニーモバイルのスタッフが)品川から小石川(ZMP)に移り一緒に開発してきた。十時氏の強力な応援が背景にある」と熱く語った。
エアロセンスの強みは、ソニーが持つカメラ・センシング、通信ネットワーク、ロボット分野における技術と、ZMPが持つ自動運転、ロボット技術、産業分野のビジネス経験を合わせた技術開発力にある。2社の強みを武器に、産業用の無人飛行機による計測プラットフォームの開発と製造、B2B向けのソリューションを提供していく。
目指す分野は、建設、物流、農林水産など生活を支える基幹産業で、2016年前半より法人向けにソリューション提供を開始する方針だ。
具体的には、エアロセンス製のドローンに、PCを通じて飛行エリアや飛行目的をあらかじめ設定する。ドローンはその設定に従って離陸ボタン1つで自律飛行し、自動帰還するのが特長だ。すべて自動化できることに加え、今後は環境認識による障害物の回避やGPSレス飛行にも対応していく方針。
エアロセンス製のドローンはマルチコプター型と垂直離着陸型の2種類がラインアップする。マルチコプター型は試作機の段階だ。重量は2kg、バッテリとカメラ込みで約3kgと小型で、高い自律飛行性を特長とする。ソニーのレンズスタイルカメラ「DSC-QX30」を搭載し、高画質な撮影が可能だ。また、TransferJetを搭載しており、PCに近づけるだけでデータ転送ができる。
一方の垂直離着陸型は、実験機という位置付けだ。神戸大学との共同開発で、マルチコプターの運用性と固定翼機の長距離・長時間航行性を併せ持つ。重量は5Kg。目標仕様は時速170kgで、飛行時間は2時間以上。最大10kgの積載量を持ち、離島や山間部への物資輸送などにも活用することを目標としている。
特にマルチコプター型はソニーのセンシング技術及び通信技術を用いることで、高精細なイメージングと高速無線データアップロードを実現し、クラウドサービスとシームレスに連携できるのも特長の一つ。
さらに、各産業分野のニーズに応じて、実際に取得する画像や動画、また、その後の自動解析(測量、スペクトル解析、画像認識)工程においてもアウトプットをカスタマイズ。アップロードされたデータをクラウド上で並列処理し、高精細2Dマップ/3Dモデルを即日提供できる。
たとえば、建設現場で撮影した2Dマップと3Dモデルを提供することで、現場の把握状況や資材の計量に応用できると見る。自律型ドローンとクラウドサービスを活用した、より効率的なモニタリング・測量・管理・物流等を実現し、環境に配慮し安心して暮らせる社会の構築に貢献していきたいとしている。
自律型のメリットについて谷口氏は、「交通事故の99%はヒューマンエラー。(ドローンを)人が操作すると落としたりする。自動化することによる安全面が大きなメリット。人はついていなければならないが、自動なので手間が省ける。熟練したオペレーターを雇用するのは金がかかるため、コストメリットが大きいのではないか」と説明した。
一方でまだ課題もある。「100%落ちない、事故がないとはまだ言えない。そこをどこまで精度を上げ、安全面を担保できるか。専門家の先生と協議しながらやっていかないといけない。法整備もそうだ。当面やるのは私有地の建設現場。ヘルメットをかぶっている建設現場で、一般の人がいないところ。私有地の中を飛ばすが、GPSやセンシングのエラーがあって飛び出ることのないように力を入れている。引き合いは多くあり、実績と信頼を積み重ねてクリアし、私有地からそれ以外の範囲を広げていくことがドローンの大きな活用になる」(谷口氏)とコメントした。
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