Googleが株式公開を果たした2004年、共同創設者のLarry Page氏とSergey Brin氏が株主候補に送った手紙のタイトルは「An Owner's Manual」(取扱説明書)だった。複合企業Berkshire Hathawayの象徴的なリーダーであるWarren Buffett氏が同社の株主に宛てた小冊子にちなんだものだ。
それから10年以上が経過した今、Googleは再びBuffett氏を手本にしようとしている。大々的な組織再編によって、GoogleをBerkshireのような巨大企業に作り変えようという取り組みだ。Page氏は米国時間8月10日、Googleの首脳陣が今後はAlphabetという名の新しい親会社の顧問団になると発表した。新会社は、Googleをはじめとする一連の企業を管理することになる。スマートホームデバイス企業のNestや、人間の老化の研究に注力するCalicoといった比較的新しい企業もその対象だ。Berkshire Hathawayの経営形態はこれとかなり似ており、GeicoやDairy Queenなどの企業を所有するとともに、Coca-ColaやAmerican Expressの株式も過半数には届かないながら取得している。
投資銀行StifelのアナリストScott Devitt氏が投資家に宛てた短信では、表現がもっと直接的だった。「インターネット版のBerkshire Hathawayが生まれる」(Devitt氏)
Page氏としては、今回の動きによってAlphabetの勝算が高まり、しかも検索や地図、電子メールサービス「Gmail」といった中枢のプロジェクトとあまりに大きくかけ離れた事業をGoogleの経営陣に担当させる必要もない。
「改めて考えることがないようなごく基本的な命題がある。人をどのように組織し、どうやって動機付けをするかということだ」。Page氏は2014年10月、Financial Timeに対してこう述べている。同氏はこのインタビューで、社会と政策の再形成にGoogleが果たす役割について語った。だが、このとき、Googleの組織図についても考えていたのかもしれない(Page氏は、Googleが目指す企業のあり方の手本になるような企業はないが、Googleの成長に伴って求められる特性を体現している人物がいるとすれば、それはBuffett氏だ、とも語っていた)。
複合企業は目新しいものではなく、メディア業界ではむしろ一般的だ。たとえば、ViacomはMTV、Nickelodeon、Paramount Picturesを所有している。だが、テクノロジ業界ではあまり例がない。
Alphabetによって、Page氏とBrin氏は経営を行いつつも、自動運転車やWi-Fi発信気球といったユニークなプロジェクトを生み出すための余裕を確保できるようになる。また、財務状況をさらに明確に示すことによって、Googleの膨大な出費や焦点のぶれに苦言を呈する投資家たちをなだめることにもなる。
「今回の組織再編の狙いは、新体制によってさらなる集中とモチベーション向上を実現し、さまざまな中核事業とそれ以外の事業を推進することだ」。Macquarie SecuritiesのアナリストBen Schachter氏は、顧客宛の短信にこう記している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」