出会い系サイトは、「出会い系サイト規制法」(「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)で規制されている。しかし、もはや子どもたちは、出会い系サイトでは出会っていない。デジタルアーツの「スマホ及びその他の携帯端末の利用と利用意識の実態」によると、男女中学生、女子小学生、男子高校生はLINEで、男女高校生はTwitterで、男子小学生はオンラインゲームなどで知り合い、コミュニケーションを取っている。
それだけではなく、中高生が出会いに利用するものには、「出会い系アプリ」もある。出会い系アプリには色々なものがあり、たとえば2014年3月には、ユーザー同士でメッセージが交換できるアプリ「おばけトーク」で女子中学生と消防士(30)が知り合い、メールアドレスを交換。消防士は、「かわいいね」「好きだよ」などのメッセージで中学生を油断させ、知り合ってからわずか5時間で全裸の写真を送らせていた。消防士は過去に10件ほど同様の犯行を繰り返していたという。しかし、このような出会い系アプリは規制対象ではないのだ。なぜか。
出会い系サイトつまり「インターネット異性紹介事業」の定義は、「異性交際希望者」同士が電子メールやチャットなどの電気通信を利用して相互に連絡できるようにする機能を備えていることとなっている。ところが、出会い系アプリは利用者が勝手にIDや電話番号、メールアドレスなどを記載しただけで、アプリ運営者が「相互に連絡することができるようにする」役務を提供しているとは言えず、「インターネット異性紹介事業」には該当しないことになる。チャットなど公然の場でやり取りするものは、1対1の連絡ではないため「相互に連絡」には該当しないとされてしまうのだ。出会い系サイト規制法の大きな抜け穴と言えるだろう。
同アプリはすでになくなっているが、見知らぬ人とLINE経由で無料通話ができたり、チャットができるアプリは山のように見つかる。そのようなアプリの1つ、ランダムで他のユーザーとチャットができる「らくがきライブ」のレビューを見ると、同アプリを使って実際に出会っていることが分かる。利用年齢は18歳以上とされているが、確認画面で「18歳以上」と自己申告すれば、18歳以下のユーザーでも利用できるのが実情だ。
中高生は好奇心が強く、異性への関心も高い。大人が止めても、隠れてネット上の知り合いに会ってしまう可能性が高い。単純に禁じたり取り上げるだけでは、危険を防ぐことは難しいだろう。ネットでやりとりをすると、自己開示効果により相手を信頼しやすくなるという心理も働く。しかし、実際は本当に悪意を持った大人は中高生を容易に騙すことができてしまうのは、さまざまな事件からも明らかだ。
「ネットで知り合った人とは会わない」というのが一番安全だ。しかし、どうしても会うというのであれば、事前にその人物のSNSの過去の書き込みなど、誤魔化せない部分を調べることで、相手の人柄について大まかな情報が得られるだろう。共通の知り合いがいるのであれば、相手の人柄について確認を取るのもおすすめだ。
どうしても会うのであれば、日中人が多い場所で、できれば複数人で会うこと。また、相手に渡す個人情報は最低限に抑えておこう。保護者や友人などに会いに行く相手や場所を告げておくとさらに安心だ。
子どもたちのネットにおける感覚は大きく変化してきている。中高生はネットで知り合った人と会うことを危険などと考えもしないが、実際はさまざまなリスクを伴う。周囲の大人は、そのことを子どもたちに警告し、危険に備える習慣をつけさせよう。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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