「出会い系サイト」の頃は、ネットで知り合った人と会うことには多少なりともあまり良くないイメージがあった。ところが、今の中高生は、ネットで知り合った人たちと出会うことに抵抗がない。ごく普通の中高生がネットで知り合った人と気軽に出会い、しかも「出会い系」とは考えていない。それゆえ、悪いこととも思わない。
「『ネットで知り合った人と会うのは危険だから』と学校で禁止されているけれど、ライブのチケットが余っちゃって一緒に行く人も見つからなかったから(ネットの友達と出かけた)。別に危険なんてないし、みんなやっているし、禁止されるなんてわけが分からない」と高校3年女子A葉は言う。A葉は東京の私立校に通うごく普通の女子高生だ。「ネットで知り合った人と会うことに『出会い系』という意識はない」と断言する。
デジタルアーツの「スマホ及びその他の携帯端末の利用と利用意識の実態」(2014年2月)によると、小中高校生においてネットで知り合った人と「会ってみたい」と“リアル化”を望む人は38.5%と約4割いる。リアル化を望む傾向は、男子より女子の方が高い。
高校生では女子高生の56.6%、男子高生の47.4%がリアル化を望んでおり、女子高正においては18.1%と約2割がすでにネットで知り合った人と会っている。中学生でも女子中学生の31.6%、男子中学生の29.4%がリアル化を望んでいる。ごく普通の小中高校生が、ネットで知り合った人たちと会っているのだ。
中高生は、TwitterとLINEをほぼ同じように利用している。Twitterは鍵をかけていないので、当然フォロワーには直接の知り合いではない人たちも多い。しかも、趣味に特化した情報を集めたり、つぶやいたりする専用のアカウント「趣味アカ」などになれば、趣味だけが共通の、性別、年齢もさまざまな人たちとつながることになる。この「趣味アカ」が直接会うきっかけとなることも多いという。前述のA葉は、あるバンドの情報を集めるための趣味アカで交流を広げ、バンドのファンとライブに出かけた。
このように目的ありきでLINEでつながって出会う例も多いが、単にLINEでからむこと自体が目的となっている例も多い。たとえば、Twitterで「#グルチャ」「#LINEグループ」などのハッシュタグをつけている場合、LINEにおけるグループチャットメンバーをTwitterで募集していることを意味する。
Twitterでは、「高校生限定」などの年齢、「モンスト」「◎◎(タレント・ミュージシャン名)」と、ゲームや好きなタレントなどテーマを限定しているもののほか、テーマがないものもメンバー募集されている。中高生たちはこのようなものを気軽に募集したり、参加したりしているのだ。単に暇つぶしでからむ相手がほしい場合もあるし、ゲームで回復アイテムなどを送り合い、互いに協力し合うことを目的としたものもある。ゲーム目的の場合は、募集しているTwitterアカウントも、「ゲーム垢(アカウント)」と明記されているものが目立つ。
中学生限定のグルチャメンバー募集掲示板もある。たとえばこの掲示板では、「彼氏・彼女募集等の個人同士の出会いコメントは『出会い系規制法』に引っかかってしまうのでやめてください。書き込み禁止処分にします」とある。
執筆現在、夏休みのためか、日中でも70人以上がリアルで閲覧していると表示されていた。女子中学生らしいユーザーが「男子はブロック」「女子だと確認できないとからまない」などと書いているが、本当に悪意がある大人であれば正体を偽ることは容易だろう。グルチャアプリもあり、ここではどこかで見たようなタレント写真を使ったグルチャメンバー募集が頻繁に流れてくる。
これまでも述べてきたが、Twitterは知り合い以外ともつながり、ツイートはユーザー以外でも読むことができるものだ。一方、LINEは本来お互いに電話番号などを知っている同士がつながることが推奨されている、プライベートなサービスだ。
LINEでつながった時点で、トーク(メッセージ)、写真や動画のやりとりだけでなく、通話までできてしまう。LINEでつながった時点で会うことへのハードルは一気に低くなるのだ。
実際、LINEのグループチャットつながりで出会った動画配信主と会って女子中学生が行方不明になる事件なども起きている。しかし、これを規制する方法はまだ何もない状態だ。
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