ドコモが4年ぶりに好転、ソフトバンクは米国事業を再建へ--携帯キャリア3社の決算を読み解く - (page 2)

Sprint復活に自信を見せるソフトバンク--国内事業は不振

 8月6日には、ソフトバンクグループが2015年度第1四半期決算を発表した。その内容を見ると、連結業績の売上高は前年同期比9.8%増の2兆1391億円、営業利益は7.6%増の3436億円となり、こちらも増収増益となっている。売上増の要因は、ソフトバンクの物販売上増加と、円安による差益で米Sprintの売上が伸びたことが主因となっているようだ。

 だが今回の決算内容は、数字自体が好調なこともあって、ソフトバンクグループにとって大きな意味を持ち合わせていなかったように見える。それを象徴するかのように、同日に開催された決算発表会の会場では、ソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏に代わって、パーソナルロボットの「Pepper」が決算を発表する様子を披露。法人向けの販売が始まるPepperのアピールに用いられた印象も受ける。


ソフトバンクグループの決算発表では、Pepperが決算発表を実施するなど、決算内容自体にはあまり重点が置かれていない印象を受けた

 一方、今回の決算発表会で孫氏が時間をかけて説明したのは、Sprintの業績回復に向けた取り組みである。Sprintは、最近T-Mobile USに契約総数で抜かれ、米国で4位に転落したとの情報が飛び交った上、それを受けてソフトバンクグループがSprintを売却するのではないかという報道もなされていた。そうした噂の“火消し”をするべく、ソフトバンクグループはSprintの具体的な業績回復策を打ち出したといえよう。

 孫氏が打ち出したSprint業績回復策の1つは、営業費用を大幅に下げることだという。ボーダフォン日本法人を買収した当時の国内携帯電話事業を例に上げると、同事業はソフトバンクが買収して以降、ブランドが傷ついておりすぐ顧客を取り戻すのは難しいことから、まず営業費用を大幅に削減することで、利益を増やすことに専念したとのこと。

 利益を増やし資金を得たところで、次の施策となる効率的な投資によるネットワークの構築を実施するという。当初Sprintのエンジニアが提示してきた次世代のネットワーク設備は、他社に追いつくことが限界である上に大幅なコストがかかることから、孫氏はそれを拒否。日本で培ったノウハウをもとにより低コスト、かつナンバーワンを獲得できるネットワークを自ら設計したとのことだ。


日本での成功をSprintに持ち込み、営業費用を抑えて利益を出せる体制を作り上げた後、低コストで他社に勝つことができるネットワークを構築する考えのようだ

 新しいネットワーク施策のヒントとして、孫氏はSprintが持つ2.5GHz帯の活用を挙げている。Sprintは、もともとClearwireがWiMAX用として保有していた、120MHz幅という広い帯域幅の2.5GHz帯を買収により所有している。これをフル活用することで、他社より充実したネットワークを低コストで実現することを計画しているようだ。

 他にもSprintが回復基調にあるさまざまなデータを提示するなどして、Sprintの再建を単独でやり遂げることを明確に打ち出したソフトバンクグループ。だが気になるのは、最近停滞している国内事業に関してだ。ソフトバンクが新たに定義した主要回線(スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレットなど)の、今期の契約数は2万の純増となった一方で、PHSや通信モジュールなどを含んだ移動通信全体の純増数を見ると、約46万9000もの大幅な純減となっている。


ソフトバンクは国内で主要回線による売上を重視するとしているが、全体の契約数は46万9000もの純減を記録している上、主要回線に絞っても純増が2万にまで落ちている

 この点について、ソフトバンク代表取締役社長の宮内謙氏は「従来は純増ナンバーワンで走り込んでいたが、今後はスマートフォンやタブレットを中心に事業を拡大していきたい。主要回線で90数パーセントの売上を稼いでおり、利益的には影響はない」と話している。だが主要回線に絞ってもなお、ドコモやKDDIの純増数に10倍以上の差が付けられているのは事実で、顧客の流出傾向が高まりつつあるのを見て取ることができる。国内事業が急激に落ち込めば、経営に与える影響はSprint以上と見られるだけに、いかに早く“止血”できるかが重要になってくるだろう。

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