ウェアラブル・テクノロジを軸にしたビッグデータやIoT(Internet of Things)の利活用などをテーマに、国内外の有識者がプレゼンテーションやディスカッションを繰り広げるカンファレンス「Wearable Tech EXPO in Tokyo 2015」が、9月7~8日に開催された。
「“連携”か“創造”か。スポーツ×テクノロジーが向かう未来」と題したパネルディスカッションでは、ハンマー投げで2004年アテネ五輪、2011年世界陸上大邱大会において金メダルを獲得し、現在は東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会のスポーツディレクターを務める室伏広治氏が登壇し、自身のスポーツ科学の研究について紹介した。
室伏氏は日本を代表するトップアスリートとして知られているが、一方で2011年には中京大学スポーツ科学部の准教授に就任、2014年には東京医科歯科大学の教授としてスポーツサイエンスセンター長に就任するなど、研究者としての一面を持つ。ウェアラブルセンサによるモーションセンシング技術の研究を長年手がけており、その研究を自身のアスリートとしての技術向上に生かしているのだという。
具体的には、ハンマーを投げるときに、ハンマーに取り付けたセンサが計測した速度をリアルタイムで音に変換し、競技者にフィードバックするというもので、自分の動作変化がハンマーの速度に反映しているかを確認できるのだという。
ハンマー投げで使用するハンマーは、野球のバットなどと違い物体(ハンマー本体)が手元から離れたところにワイヤがつながれている。そのため、腕の動作をハンマー本体に伝えて効率よく加速させるのが難しいそうだ。「ハンマーに引っ張られる感覚は伝わってくるが、横方向に加速している感覚はわかりにくい。自分が速く回っているつもりでも、ハンマーが十分に加速していないことも多い」と室伏氏は説明する。
そこで、ハンマーにどの程度力が伝わっているかを音に変換し、どのように身体を動かせば効率よくハンマーの加速につながるかを研究したという。「ロンドン五輪(2012年)の前にこの仕組みを開発した。年齢を考えると、むやみやたらに身体を動かすと怪我をしてしまうので、自分の動きが直接ハンマーに伝わっているかを直接確認しながら練習することが非常に重要だった。こういった研究が銅メダルにつながったのではないか」(室伏氏)。
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