ソフトバンクが7月30~31日に開催した法人向けイベント「SoftBank World 2015」。2日目の基調講演では、ソフトバンクの代表取締役社長に就任したばかりの宮内謙氏が登壇し、新たなテクノロジを積極的に取り入れてビジネスを拡大する方針を打ち出した。
宮内氏は冒頭、研究機関「Google X」の創設者としても知られ、現在は自動運転車の研究を進めているセバスチャン・スラン氏がインタビュー記事で語っていた、「新しいテクノロジの強烈な破壊力の前に、安全なビジネスモデルはない」という言葉を取り上げた。
その上で、宮内氏はスマートフォンや3Dプリンタ、配車サービス「Uber」などの事例を挙げ、「我々は普段、顧客第一主義を掲げてライバル企業と戦っている。だが新しいテクノロジが出てくると同時に、自分たちが競合と全く認識していなかった人たちが現れ、顧客をばっさり奪っていく。そうしたことがこれまで沢山あったと思う」と過去を振り返った。
しかしながら、企業には多くの既成概念が存在するのも確かだ。そこで宮内氏は、これからの経営者は新たなテクノロジに対するアンテナを常に張り、最新技術を積極的に取り入れて、既成概念を1つずつ破壊していくことが重要だと訴える。
では実際、新たなテクノロジによって、今後どのような変化が起きようとしているのか。そして、そうした将来に向け、ソフトバンクではどのような取り組みを進めているのだろうか。宮内氏はECやセキュリティなど、いくつかの事例を交えて同社の取り組みを紹介した。
中でも、同社が力を入れているものの1つが“接客”だ。宮内氏はロボットによる接客の時代が数年後にはやってくると話す。そこでソフトバンクでは、「コンシューマー向けは7月販売分も1分で売り切れた」という人型ロボット「Pepper」を、今後全国3000を超えるソフトバンクショップやワイモバイルショップに店員として投入することを計画しているという。
Pepperは月あたりのレンタルコストが5万5000円(税別)であり、かつ残業規制なく24時間働いてくれることから、大幅なコスト削減につなげられる。また、すべての情報をクラウドで処理していることから、カメラやセンサなどから接客した人の属性や、接客時間、アンケートによる接客の感想などを、特定の人によるバイアスがかかることなく収集し、より最適化された接客につなげられると宮内氏は話す。
そして、もう1つが“ワークスタイル”。このワークスタイルに革命を起こすと宮内氏が考えているのが、AI(人工知能)だ。ソフトバンクはIBMと提携し、AIによるコグニティブ・コンピューティングを実現する「Watson」の日本展開を進めているが、膨大なデータからさまざまな仮説や検証ができ、さらに経験から学習する能力も備えたWatsonが、今後幅広い業務に革命をもたらすと考えているようだ。
宮内氏は、自らWatsonのビジネス活用を提案すべく、ソフトバンク社内にWatsonを用いた業務支援システム「SoftBank BRAIN」を提供すると話す。SoftBank BRAINは、Watsonが持つ情報と自社のデータを組み合わせ、スマートフォンなどから利用することで業務を効率的にこなすシステムになるという。
SoftBank BRAINは現在自社で検証している段階であり、実際の導入事例を見せられるのはこれからだと宮内氏は話す。しかし、すでにソフトバンクショップの一部機器にはその機能が搭載されており、統計データをもとにアドバイスする仕組みを設けているとのことだ。「自分たちで本当に使ってみて、完璧に生産性向上に貢献するものを広めようというのが我々のポリシー」(宮内氏)としており、今後はコールセンターや法人営業など、複数の部門での導入を進め、検証を進めていくとしている。
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