現実がゲームの世界を超えた日--バンナム、アイマス10周年記念でドームライブを開催 - (page 3)

佐藤和也 (編集部)2015年07月21日 17時48分
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特に印象に残ったアーケード版プロデューサー登壇と「終わらないmy song」

 筆者が今回のライブで特に印象に残ったところが2つある。まずは18日の新情報発表のあと、坂上氏とともにアーケード版のプロデューサーと務めた小山順一朗氏、アーケード版ディレクターで現在もシリーズ総合ディレクターとして関わり続けている石原章弘氏が登壇して、10周年を迎えたことに対しての感謝を述べたところだ。小山氏はアーケード版PVの春香のセリフについて触れ、それが実現したことの驚きを語り「日常と違う生活を、という気持ちを込めて開発したタイトル。本当に作って良かった。今日は人生で一番幸せ」と喜びを述べた。石原氏は「アイドルマスターは最高ですか?」と会場内に問いかけ、帰ってきた最高の声に「僕も最高だと思います。これからもよろしくお願いします! 」とメッセージを送っていた。

 過去を振り返って思い出すこととして、アーケードゲームでは稼働前にロケーションテスト(ロケテ)を行うことが多く、アイマスでも正式稼働までに3回ほど実施された。筆者がプレイヤーとして遊んだなかでいくつか魅力に感じたことがあるのだが、そのひとつに開発スタッフ自ら現場に立ってアテンドを行っていたことと、小山氏がメモを片手に積極的にプレイヤーに話しかけ、気になったことを細かく書き記していた光景があった。そのような光景はとても珍しかったと記憶している。筆者もさまざまな意見を話したが、小山氏をはじめとした開発スタッフが真剣に耳を傾けつつ、飾らない本音の言葉で語るなどその姿勢にいたく感銘を受けた記憶がある。

 こういった制作者側との距離感の近さが、アイマスの魅力の根底にあるものと今でも考えており、そしてそこで生まれた小さながらも熱量の高いコミュニティが、少しずつ時間をかけて広がっていったものだと感じている。もちろん外側から見ているなかで、その後行われたさまざまな展開の全てがうまくいったわけではないと感じているものの、それでもどこかつなぎ止めたり、戻ってきたくなる魅力があったからこそ、今の状態があるのではないかと感じている。

 小山氏が表舞台に立つ機会はそう多くなかったが、アイマスにおけるキーパーソンのひとりであったことに間違いがない。この日はアーケード版での楽曲も多く披露されたこともあるが、なにより同氏が大きな舞台に立ったということに、ロケテ時代で接した筆者としてもとてもうれしかった出来事だった。

 もうひとつは、19日の終盤で歌われた「my song」。これを中村さん、今井さん、釘宮さん、平田さん、たかはしさん、下田さんの6人が歌い上げたところだ。歌い終わった後、中村さんはこのメンバーが最初期から10年以上、変わらず役を担い続け一緒にステージに立ち続けたメンバーであることを告げ、その後も涙ながらに感謝の気持ちを語ると、鳴り止まないの大きな拍手に包まれていた。

 アーケード版の本稼働の前、2005年2月にアミューズメント機器の展示会「AOUアミューズメント・エキスポ」のナムコブースで小山氏と石原氏、そしてキャスト陣が登壇してイベントを行ったことがある。小山氏と石原氏が緊張した面持ちでゲームの説明を行い、キャスト陣がトークや歌を披露した。熱心なファンが多く集まり盛り上がっていたのだが、ブースの一角で行われたためステージも大きくなく、そのときステージ前に集まっていたのは数十人程度。それでも多かったといえる時代だった。当時のアーケードゲームで、かわいらしい女の子のキャラクターを全面に押し出したゲームは異例であり、アミューズメント系の展示会で声優が歌うということも珍しいとあってか、物珍しさからかちょっと距離を置いて眺めている人も多かったことを覚えている。

 そういった物珍しさが人気に変わり、10年間展開が続き、仲間となるアイドルや命を吹き込むキャストが数え切れないぐらいに増えたこと、そしてこれだけの大きなライブイベントを開催する未来というのは想像できない。それだけに、西武プリンスドームで見た景色というのは「信じられない」の一言だ。10年もの間展開が続けられるコンテンツは数える程度であり、ことアイマスのように徐々に人気を増しながら展開されているのは異例だろう。奇跡的とも言えるのだが、それはさまざまな積み重ねがあってのこと。少しずつ大きくなっていくところを初期のころから10年以上見続けられ、また筆者は異動前の媒体から約7年近く、大なり小なりアイマス記事を書き続けているのだが、それができるのも“ぜいたく”なことなのかもしれない。また9周年ライブのときにも近いことを書いたのだが、デジタル世界のコンテンツを輝かせるのは、やはり“人”だと、改めて思った次第だ。

 「my song」の最後のフレーズは「終わらないmy song」。中村さんは、この先変わらず続けていくことを明言。ゲーム世界ではドームライブが終わるとアイドルのプロデュースは一区切りとなるが、それが終わらないということは、現実がゲーム世界を超えていくことを意味するととらえている。超えた先にあるのはどんな景色があるのか、楽しみにしたい。

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